第17話 宴

「それでは我ら勇猛なるドワーフの勝利と、そしてなによりその勝利に大きく貢献してくれたゴーレムスレイヤーテオドルフ殿とそのお仲間たちにぃ! かんぱーいっ!」

「乾杯ッッ!」


 ドワーフの人たちは本日何度目になるか分からない乾杯をして、お酒をごくごくと飲んでいく。ドワーフが大酒飲みということは本で読んだことがあるけれど、書いてあった以上に飲んでいる。体が大きいわけじゃないのに、どこにあんなに入るんだろう。


「はあ。あの戦いが終わってすぐに宴を開くなんて信じられない。疲れてないのかしら」


 僕の隣に座るアリスが呆れたように呟く。

 そう、この都市オルヴァザールを丸ごと会場にした宴は、戦いが終わったその日に開かれたものなんだ。


 岩の王とその主人を弔った僕たちがオルヴァザールに戻ると、都市の復興と並行して宴の準備が進められていた。なんでもドワーフは小さないいことでも盛大な宴を開くらしい。

 ガーランいわく「酒が飲めればなんでもいいんでしょう。私も気持ちはよく分かります。」だそうだ。


 僕たちが帰ってきて岩の王の脅威がなくなったのを知るとドワーフの人たちは喜び、そのまま宴が始まってしまった。そうして今に至るってわけだ。


「我らの英雄テオドルフ! 楽しんでるか!?」

「わっ!?」


 突然一人のドワーフが首に腕を回して絡んでくる。

 僕たちが最初に出会ったドワーフ、ガボさんだ。すでにたくさん飲んでいるみたいで顔が真っ赤だ。


「はい、楽しんでますよ」

「それは良かった! テオドルフは今日の宴の主賓だからな! おい! そっちの肉をこっちにも持ってこい!」


 ガボさんが大きく声を出すと、こっちのテーブルに巨大なステーキが置かれる。

 とってもいい匂いがして美味しそうだけど、なんの肉だろう?


「ガボさん。これは?」

「これは洞窟豚のステーキ。洞窟の中にひっそりと住んでいる豚で、地上ではめったに見られない動物だ。ほら、食ってみるといい」


 洞窟豚のステーキをナイフで切り分け、食べる。

 すると甘い脂がじゅわっと口の中に広がり、溶けていく。

 

「ああ、おいしい……」


 塩が濃い目に効かされていて疲れた体に染み渡る。

 僕は夢中になてそれをガツガツと食べる。


「はは、いい食べっぷりだ。遠慮せず食うんだぞ」


 僕はお言葉に甘えて宴を楽しむ。

 体は疲れ果てているはずだけど、不思議と目は冴えている。このまま宴を楽しんで、そのまま気絶するように寝るのもいいかもしれない。


 なんだかんだアリスも楽しそうにしているし、ガーランに至ってはドワーフたちとどっちが多く飲めるか勝負している。あの戦いを経て、僕たちはすっかり仲間になっていた。


「テオドルフ、他に食べたいものとかはないか? してほしいことがなんでもワシに言ってくれ」


 ガボさんはずいと体を乗り出しそう言ってくる。

 してほしいこと言われても、正直ちょっと困ってしまう。ガボさん的には僕に恩を返したいんだろうけど、特に今してほしいことと言われても思いつかない。


 返事に困っていると、ある人物が僕たちのもとにやって来る。


「ガボ、そんなに役に立ちたいならいい方法があるぞ」

「ん? 誰かと思ったらドゥルガンじゃねえか」


 やって来たのはドワーフの王、ドゥルガン陛下だった。

 ドゥルガン王も今は宴を楽しんでいるようで、王冠やマントなどは外して手にお酒が入った杯を持っている。頬もほんのり赤くなっている。


「なんだ、そのいい方法ってのは」

「テオドルフ殿は約束通り岩の王を倒してくれた。ならば私も約束を果たさなければならない」


 ドゥルガン王は僕の前にやってきて、真面目な表情で口を開く。


「テオドルフ殿、約束通りオルヴァザールはルカ村と友好関係を結ぶ。我らはこれより最大の友となり、共にこの地で生きていくために、最大限の協力をすることを誓おう」

「……!! ありがとうございます、ドゥルガン王。これからよろしくお願いします!」


 僕とドゥルガン王は固く握手をする。ドゥルガン王の手はゴツゴツしていて力強い手だった。

 ドワーフの人たちと友好関係を結べれば、鉱石や石材に困ることはなくなるだろう。本当に心強いや。


「して、友好関係を結ぶのであれば、当然我らの間を繋ぐ役、使者が必要だ。この役目はテオドルフ殿と親交が深く、ドワーフの中でも顔が広い者が適役だと思うが……いい人材はいただろうか?」


 ドゥルガン王が思わせぶりな感じでいうと、ガボさんは「はっ!」とその言葉の意味することに気が付き、勢いよく挙手をする。


「その役目、ワシが引き受けたぁ! そんな大切な役、他の者に任せられるか!」

「はは、やる気だな。そう言ってくれると思ったぞ」


 ドゥルガン王は上機嫌にそう言うと、再び僕の方を見る。


「そういうわけだテオドルフ殿。ガボはやかましいが、腕は確か。しばらくルカ村に置いてくれるか?」

「はい、もちろんです! 仲間が増えて僕も嬉しいです」


 ドワーフの手先の器用さは有名だ。それを学べるいいチャンスだ。

 それに仲間が増えるのは純粋に嬉しいし、これで一層賑やかになるね。


「それでは改めて、これからよろしく頼む」

「はい。こちらこそよろしくお願いしますね、ガボさん」


 僕とガボさんはガシッと握手する。

 こうして僕たちの村に、また新しい仲間が加わるのだった。

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