(4)

 犬カフェの中はごく普通の喫茶店で、様々な種類の犬が戯れていたり、寝そべっていたりしていた。見渡す限りでは、大型犬の姿は特に見当たらず、小型犬が中心になっている様子だ。

 小型犬だと騒がしいイメージがあったけど、そんなこともないんだ。皆いい子で大人しくしているし…何より遊んでいる姿が可愛いな…!

 「いらっしゃいませ」

 「二人でお願いします」

 「分かりました、お席へご案内します!」

 店員に案内され席へ座る。犬は人なれしているのか、席に案内されるときに僕らの後を追いかけてくる。なんという癒し空間なのだろう。話を聞くと、ワンドリンク時間制限なし。軽食もあるみたいだった。

 「お腹空いた?飲み物以外に頼もうか?」

 「大丈夫」

 「そ、そっか。」

 ひまわりはなんだかそっけない。今日は疲れちゃったのかな?とりあえず二人分の飲み物を注文して、寄ってきた犬と遊ぶことにした。

 見た感じ…ポメラニアン、チワワ、トイプードル、マルチーズかな?すごいな…こんなに種類が居るものなんだ。看板犬が一匹居ます!ぐらいかと思っていたのに。皆可愛いな~!何も持ってないのに寄ってくるし!

 「ひまわりも触ったら?」

 「大丈夫」

 「どうしたの?」

 「なんでもない!!」

 なんか怒ってる…?やっぱりイヤだったかな?ひまわりは僕を半分ぐらい開けた目で見つめてくる。あぁ、不信なんだろうな。でも、ひまわりが良いって言ったんじゃないか。僕が膝の上に犬を乗せて可愛がっていると、ひまわりはそのままそっぽを向いた。

 「リリイは良かったのにここは嫌なの?」

 「嫌じゃないって!」「じゃあなんで怒ってるのさ?」

 「怒ってないよ!!」

 「怒ってるじゃないか!」

 あ…まずい。ここはカフェだ、感情的になると他の子たちを怖がらせてしまうかもしれない。ただ場所を変えようにも…どうしようもない。店員が運んできた飲み物を無言で飲む。なんでこうなったのかな…。

 膝に乗せたままの犬が大きな瞳でこちらをじっと見つめてくる。ごめんね、君を怖がらせたかった訳じゃ無いんだよ。撫でてあげるとすっと目を閉じて受け入れてくれる。

 「ごめんね、本当に。」

 「わぅ~。」

 慰めてくれているのか?ありがとうね。この後も同じ家に帰るんだよな…僕から先に謝った方がいいだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る