(3)
二人で並んで椅子に座る。ひまわりはそわそわと落ち着かない様子を見せてる。なんだろう?何か言いたいのかな?それとも…トイレかな?
「寄人?楽しい?」
「た……え?」
「私が居なくなってから、元気がなかったって」
「あ…あぁ、うん。楽しいよ」
「そっか!よかった!」
楽しい…楽しいよ。色々なものをくれたし、気づかせてくれた。今、最高に楽しいと思ってる。なんで急にこんな事を聞いてくるんろう?何かあったのか…?
「何かあったの?」
「ううん?何もないよ?」
ひまわりはいつも通りの笑顔で僕を見つめる。含み持たせすぎでしょ…。なんか…考えたくないけど、まるで消えちゃう人の前振りみたいな聞き方だったよ?
「僕はひまわりが来てくれて嬉しいよ?」
「ほんと?!ありがと!」
あぁ…今のチャンスだったかな?本当に…ヘタレだ。何一つ大事な事は言えないでいる自分に嫌気がさす。
「いこ?」
ひまわりから差し伸べられた手を取って「行こうか」と答える。ひまわりは引っ張っていってまた浅瀬でたくさん遊んだ。
部屋に戻ってそれから…記憶がない。気づけばもう夜になっていた。隣を見ると、寝息を立てるひまわりが居る。二人で寝てしまっていたらしい。夜ご飯…食べてないな。
「しまった…!ひまわり!」
寝ているひまわりを揺さぶる。ひまわりは目をこすりながら体を起こして「んぅ?」と返事をする。時間は…あれ?思ったよりも進んでないな?まだ間に合うか。ひまわりを連れて両親の部屋に向かう。
「まだご飯食べてないよね?」
「そうね、食べてないわよ?」
「良かった…。」
「血相変えて出てきたから何事かと思ったわ」
「だって…楽しみじゃない?」
「そうだね、きっとすごい物が出てくるんだろうな!」
父さんと母さんも意外と楽しみにしているみたいだ。旅館の料理なんて旅の醍醐味、一大イベントに等しい。そんなのを逃したら……逃したら、泣く。寝ぼけ眼のひまわりを引っ張って、両親と共に指定された宴会場へと向かった。
「いやぁ…本当にすごかったね!」
「うん!おいしかった!」
「あんなコースみたいな料理は家庭では食べられないからね」
一つ一つ丁寧に説明されて出される料理が印象的で、お通しから前菜へ最後は甘味と合計で九つ程あった。刺身も海が近いことがあってか、生臭くなくて本来の魚の味が引き出されていた。
「あんな刺身食べたら他の刺身なんて食べられないかもしれない…。」
「滅多に食べられるものじゃないわ」
「すごいよ!おいしかった!」
もう…ひまわりはおいしいしか言えなくなってる。実際僕も別においしかったぐらいしか言えないんだけど。グルメリポーターって本当にすごいんだな。あんなにおいしい物を毎日食べていたりするんだろうか?
部屋に戻ってベッドに寝転がる。お腹いっぱいだし、満足感がすごい。このまま眠れそうだけど…風呂も楽しみなんだよな~。
「で?どうしてこうなった?」
「なにが?」
いやいや。水着入浴可能です、は分かる。家族風呂があることも分かる。なんでひまわりと二人で入ることになった?!
「寄人!大きい!」
「な?!何が?!」
「お風呂!」
「あぁ、うん。大きいね?」
うん、大きいね。お風呂。大きい湯舟の中をひまわりは泳ぎ回っている。はぁ…二回程度じゃ慣れるもんじゃないよな…。
近くにあったシャワーで体を洗う。ひとしきり綺麗になってから、もう一度入浴した。お湯を掛けるとひりひりするから温泉の効能だと思っていたけど、良く体を見て見たら赤くなっていた。日焼けだった。
「明日は…観光地を回って、最終日に帰る、かな」
「早いね!」
「うん?まぁ…そうかもしれないね?」
確かに、早いと言われたら一日が経過するのが早かったな…海で遊んでいたら一日経っていたから。明日は早いみたいだし…備えようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます