第14話 属性ランキング①

 ──ポピュア村──


 青い夕暮れの中、石の球体家々の窓からポッポと灯りがと灯り始める。


 リヨクは、村の中央広場にあるベンチ植物に座りながら、いつものように、オウエンとユウマを待っていた。


 3人は今宵もポピュア村の食堂で夕食を共にする約束をしていたのだ。


 ──「オベリスク置くところ探してたら遅くなった」

 ユウマが来た。


「オウエンは?」

「ユウマの後ろ」とリヨクは言った。


 ──ᕦ(ò_óˇ)ᕤ。


「いこっか」




 ──ポピュア村、食堂──


「「ごちそうさまでした」」


 リヨクとユウマは声を合わせて言うと、寝ているオウエンを見た。


「こいつまた食べてすぐ寝てるよ」

「だね」


 ユウマとリヨクは、あくびしながら言った。


 ──「2人とも眠たそうね」


 ポピュア村の料理人、トリルトが微笑みながら話しかけてきた。


「うん。眠いけど」と言い、ユウマは、顎でオウエンを指した。


 優しく微笑むトリルトは、「いつも一緒のメニューだけど、飽きない?」と言った。


「「飽きない」」


「そう、ならいいけど」


「てかおれらがいっつも食べてる寿司とかオムライスって、植物で作ってるってほんと?」


 ユウマがトリルトに聞いた。


「そうよ、いろいろな植物を組み合わせて、再現しているの」

「なんで植物にこだわるの?」

「なんでって、毎晩あなたたちに食べさせるためには、魚や鳥を殺さなくてはいけなくなるからよ」

「仕方なくね?」

「地球では当たり前かもしれないけど、この世界ではいけないことなのよ。

 殺したりしたら鎌の人に怒られちゃうわ」


「それってたしか、自然を愛する人だよね」とリヨクは、2人の会話に参加した。


「そうとも言えるわね。地球にはいないのかしら」


「動物が好きな人ならいるよ」とリヨク。

「いや、鎌の人ってそんな感じじゃないと思う」ユウマ。

「え? じゃあどんな人?」

「妖精? みたいな」

「私も見たことないの。ほんとにいるみたいだけど」

「幽霊……じゃないよね」

 リヨクは静かに言った。


「幽霊とかでもない気がする」

 ユウマは、食い気味に言った。


「じゃあなに」リヨクは首を傾げた。


「キョンシー」

 オウエンが起きてきた。


「聞いてたの?」リヨクが言った。


「ちょろっとだけ。おれは、鎌の人、キョンシーみたいな感じかなっておもってる」


「うん、おれもキョンシーだと思う、帰ろ」と言い、リヨクの肩をポンと叩いた。


「うん」リヨクも同意した。


 眠気の限界に達していた2人は、「え、おれ起きたばっか……」と言うオウエンを残して、急いで食堂を後にした。




 ──次の日、教室。


「──それでは、植物学フィトヒュス 植物術実践を始めます」


 メヒワ先生は、旧楽園の子たちに「自習していて下さい、またあとで呼びます」と言うと、ポピュアの子たちに向かって話し始めた。


「右側に立つ葉を見てください。これの葉はポピュアの属性別ランキング表です」


 右側に生え立っている葉の上部にはそれぞれ、


 〝赤色: ヴァル ユウマくん

 水色: ロロ カレハくん

 白色: レルム エーテルくん

 紫色: ダァ アリスちゃん

 桃色: コエニカ オウエンくん

 緑色: 成長リベク リヨクくん〟


 と葉脈によって名前が浮き出ていた。


「え! ぼくの名前がある!」リヨク。


 口を尖らせリヨクとユウマを見るオウエン。


「もしかしておれらって、すごい?」ユウマ。


「あなたたちは、入学してからまだ一週間程しか経っていません。ですので、旧楽園の子たちと競い合うのはまだ早いです。


 まずは、ポピュアの中で上位を目指しましょう。


 これは、適性を見た現時点でのランキングですので、これから順位が変わっていくでしょう。


 すでにランキング上位にいる子は、自分の得意な分野をさらに深く学び、学年ランキングにはいるよう頑張って下さい。


 そして、属性を極めて試験にも挑戦してみてください。


 *属性試験に合格するとバッジから花びらが生えてくる。


「花びらを獲得しているのは、今いる全学年合わせて12人だけ。


 2枚以上持っているのは、グオの兄、リゼただ1人だけ。


 それだけ、獲得するのは難しいということです。

 この学年には、すでに花びらを獲得している子がいますが……」


 メヒワ先生は、旧楽園の子たちを見た。


 目線の先には、りんごを風で浮かし、風でシュッと切るグオの姿があった。


 そして、先生はポピュアに向き直り、「あの子は特別です」というと、話を続けた。


「ですが、これまでに多くのポピュアが花びらを獲得してきました。


 卒業したの生徒も、ポピュアです。


 彼らも皆さんと同じで、旧楽園の子たちより出遅れた状態から学び始めましたが、誰よりも素晴らしい結果を残したのです。


 ですので、いま能力に差があると感じていたとしても心配する必要はありません。


 皆さんが目標に向かって努力し続けていれば、ランキングの上位に登り詰めることや、花びらを獲得する可能性は十分にあります。


 特に、ユウマくん、エーテルくん、リヨクくんは、学年ランキング入りするのも時間の問題でしょう。


 この3人はすでに高い能力を持っており、あとひと押しの努力で学年トップに仲間入りできるでしょう。


 それでは、現段階でのポピュアのトップレベルを見てみましょうか」


 メヒワ先生は、ポピュアの属性別ランキングトップの6人を前に呼んだ。


「え!」と照れ笑うリヨク。

 平然を装うユウマは「いこーぜ」と言った。


 オウエンは、スキップしながら先に前に向かっていた。


 ──「現時点では、この6人がポピュアの代表です。


 ではまず、ヴァルの1位、ユウマくんから、術を見せてもらいましょうか」


 メヒワ先生は、ユウマに、赤い目玉のような実をつけた植物チイを手渡した。


「え?」と戸惑うユウマに、先生は「《ヴァル》と唱えるだけよ」と言った。


「え……」


「あなたと火植物の相性はバツグンだから、初めてでも大丈夫」


 ユウマは、一息して、「《ヴァル》」と言った。


 すると、赤い目玉のような実をつけた植物チイの瞳から、火がぼーっと出た。


 ポピュアの子たちが拍手すると、となりで自習している旧楽園の子たちもユウマを見て、拍手した。


 すると、メヒワ先生は、旧楽園の子たちを呼び、その《チイ》の瞳から出る火を代表者に触らせた。


「冷たっ…え?」


 先生は、続けてオウエンにも触らせた。


「冷た!!」


 触った2人は不思議そうに火を眺めている。


 メヒワ先生は、旧楽園の子たちを近くに座らせ、話し出した。


「ユウマくんは、熱い火を冷たい火に変えました。


 これは非常にめずらしい現象で、


 逆象アンツィルと言い、ユウマくんの特性が、《チイ》に移り、《チイ》が吐き出す火の性質を変えてしまったのです。


 《チイ》は、ユウマくんから何かを感じ取ったのでしょう。


 練習して使えるようになるものではありません。


 逆象アンツィルが起こるということは、それだけ火植物とユウマくんが互いに理解し合っているという事。


 ユウマくんは、将来、炎帝『アルハライハ』を超える火植物使いになれるかもしれませんね」


 旧楽園とポピュアの子たちが拍手する中、シユラは腕を組み、怖い顔でユウマを見ていた。


 それから、覇気がなく、常に目が半開きの少年『カレハ』が、水植物に「《ロロ》」と唱え、水をちょろちょろっと出し。


 テクノカットの美少年『エーテル』が、風植物に「《レルム》」と唱え、りんごを浮かしたり。


 羊のようなモコモコとした、ショートボブ髪型の少女、『アリス』が、毒植物に「《ダァ》」と唱え、毒植物から垂れた透明な液体を灰色の石に落とし、石の色をピンク色に変えたり。


 オウエンが、匂植物に「《コエニカ》」と唱え、「くさっ!」と言ったり。


 ──した後。ついに、リヨクの出番が来た。


 メヒワ先生はリヨクに、ただ芝を成長させるだけで良いと指示した。


 リヨクは、ポピュアと旧楽園の子たちが注目しているのを確認し、芝に集中した。


 ──「《リベク》」


 すると、ぐーっと芝が集まり出し電柱ほどの太さになると、ビュンッと、まるで緑龍が飛翔したかのように、芝は成長した。──そして、塔を突き破った。


 ──「・・・」


 子どもたちは座ったまま口をひらき、上を見上げている。

 ──リヨクもそれに参加した。


(まぶしいなぁ……)


 ──「成長リベクはまちがいなくあなたが一番よ。上に伸ばすだけなら、学年1かもしれないわね」


 メヒワ先生の目は、リヨクに真っ直ぐ向けられており、塔を壊したことを一切気にしていないようだった。


「え、壊しちゃったけど……」とリヨクは、気まずそうに言った。


「まったく気にすることないわ。その力をこれからどんどん磨いていきましょう」


 そう言うとメヒワ先生は、前に呼んだ6人を席に戻した。


「それじゃ次は、学年トップの実力を見ましょうか」


 先生は、旧楽園の子6人を前に呼んだ。

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