第40話
(また、火事か)
眠りにつきどれほどの刻が経ったのかは分からないが、先程の
「燃えているのは
「あぁ、今朝の瓦版に出てた、皆殺しにあったというあの家か!」
「なんでも、火を消しに行った同心や火消し達の中におかしくなっている奴まで出ているらしい」
(
直ぐに服を着る。短刀を懐に入れ、急いで階下に降りた。店の外に出て、噂話をしている者達の中に飛び込み、一人の胸倉を掴んだ。
「どこだ!
突然飛び込んできて胸倉を掴まれた男は、その手を振り払おうとした。しかし、手は全く動かない。見下げてくる眼は殺気を帯びており、いつでも首をへし折るというような強い力で締め上げてきた。
噂をしていた男は目を白黒させ、取りあえず放すように手を叩く。周りにいた他の者達も必死で引きはがしにかかった。
「おぃ、あんた。何しやがるんでぃ。それが人に物をた……ず……ね……」
時雨の眼は人斬りの眼になっていた。息巻いていた者達は動くことも出来ずに固まっていた。近くにいた女性が
「もう一度聞く。
最初に胸倉を掴まれた男は震えながらやっとの思いで声を絞り出した。すでに地面は濡れている。
「あ、ぅ、下、下・・・・・・屋敷だ・・・・・・」
男はそこまで言うのが精一杯だった。
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目的地は
先程の噂が本当ならば、
近くまで行くと、その惨状が目の当たりになった。もはや、証拠どころではない。火消し達も風下に立たず、消火もせず、ただ延焼を防ぎ様子を見ているだけのようだ。時雨は近くにあった木に寄りかかり、暫く火事を眺めていた。昨夜のうちに
狙うのが楽なのは江戸家老だろう。主君は今頃、江戸城に呼び出されているはずだ。
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