第30話
先程は手が回らないほど忙しそうで、話しかけることすら出来なかった。しかし、江戸中から医者が手伝いに来ており、今は自ら治療はせず、あちらこちらに指示を出しているだけだった。
「
「
「ふむ、針の痕……か、今の話の場所が本当だとすると、何かを体内に入れられたようじゃな」
「おぉ、すまん、すまん、つい、はっはっはっ」
笑いながら
「こちらが一段落したら
それだけ言うと
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男と女の
「!」
先頭を行く者が片手を上げた。
全員の動きが止まる。
地下では二人の
六人のうち二人が部屋の隅の奥まったところに何かを運んで、置く。そしてそれを中途半端に隠す。その作業が終わると六人は何事もなかったかのように地下室を後にした。
(とりあえず、一つ済んだな。早めに
六人の中にいた
殺害する予定者は、先程二人が監視を始めた番頭、そして、
残ったのは
部屋に飛び混む瞬間。
突然、障子の奥から刀が突き出された。それは手下の喉を確実に貫いている。致命傷だ。
障子が蹴破られ、中から
「大人しく、お縄に付けぇい!」
同心が十手を構え、
斬りつけられた同心は口から泡を吹き、喉を押さえ身体を震わせて倒れた。もう一人、同じ運命を辿る。
「気をつけろ、刀に毒が塗ってあるぞ!」
(何故だ? 何故襲撃がばれた?)
耳を澄ますと
途中、番頭が殺されているのを確認したが手下はいなかった。素早く二階へ移動する。緊急時の集合場所だ。
二階に駆け上がるとそこにも
実戦慣れしている
(なんだ、こいつら。なぜ鎧を着てこれだけ動ける)
(くそ! なんだ? なんだ?? 強すぎる!)
渾身の一撃を放つも軽く受け流され、確実に浅い一撃が打ち込まれる。
しかし、決して深く踏み込んでくることはない。籐八郎は一撃当たれば勝てるという思いが強く、刀を振るう動作が徐々に大きくなっていることに気がつかなかった。
三人の連撃が動きの鈍った
ほんの一瞬で
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周りを囲んでいた同心や岡っ引き達も被害を受けた。次々と泡を吹きながら倒れてゆく。
「屋根だ、
そしてそのままゆっくりと後退してゆく。
何かが弾け、焼ける匂いが漂った。
轟音が、下がってゆく役人達を襲った。数人が吹き飛ばされる。
屋根の上にはゆらゆらと紫色の煙が立ちのぼっている。すぐに大量の矢が降り注ぎ始めた。
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そこへ突然、轟音が響いた。
(不味い)
矢を放っていた者の一人が
奥にいる三人が刀を抜き放ち、
鈍い音がして、そのまま屋根の上に倒れた。
「引けっ!」
残った四人は言葉と同時に大通りの反対側に飛び降りた。
投げ放たれた火は、黒い水の中に落ちた。火が一瞬にして炎に変わる。熱風が
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炎はすぐに建物に燃え移り、煙を上げ始めた。表通りに人が集まっていたので吉原の大通りは大混乱となった、
かんかんかん・かんかんかん・かんかんかん
すぐに半鐘が響き渡る。逃げ出す者、水を掛ける者様々だった。大門はごった返したがすぐに役人に鎮圧され、奉行所によって出入りが管理された。
江戸中から火消し達が集まってくる。すぐに、
二刻後、炎は完全に鎮火する。
最終的に五つの
そして、もう一つ不幸なことが起きていた。捕らえていた最後の両腕を落とされていた者が死んでいるのが見つかったのだ。首筋に一本の棒手裏剣が刺さっていた。
「折角待ち伏せまでしたのに、すべての賊が殺されてしまうとは……」
「待ち伏せがばれていたというよりは、
岡崎ともう一人の
怪我人達は
「岡崎様、ちょっとよろしいでしょうか?」
両腕を切り落とされた者を検分していた者から呼びが掛かった。
岡崎は同僚との会話を打ち切り、そちらの方へ向かう。そこには手配書の人相書きと同じ人物がいた。
「ああ、証人に死なれちまったか」
岡崎は大きな溜息をつく。
そこに同心から3つの筒が渡された。蓋を開け、中を覗くと赤い液体が入っている。匂いを嗅ぐと一瞬、頭の中がくるりと回転した。慌てて頭を左右に振り、気を張り詰める。
「おい、
呼ばれた岡っ引きはすぐに
(杞憂だと良いがなぁ)
岡崎は心の中でつぶやき、これ以上面倒にならないように祈る。
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