第20話 ここは何処?
引き摺られて抵抗していたらお腹を殴られて気絶させられてしまった。
宰相に連れて行かれたところはわたしの知っている王宮ではなかった。
「ここは?」
周囲を見回すと誰もいない静かな場所だった。
だけど、とても人がいない場所には見えないくらい豪華な家具や絵画、花瓶などが置かれていた。
誰かが暮らしているような印象なのに全く物音がしない。
「誰かいませんか?」
声を出してみた。
何も返事は返ってこないし全く物音は聞こえない。
ここは………たぶんどちらかの側妃が住んでいた宮なのだろう。
二人とも離縁したと聞いたから……ここには人気がないのかもしれない。
宰相はどうしてここに連れてきたのだろう。わたしが王城に無断で侵入したのは確かだ。だったら牢に入れるはずではないのかしら?
ーーアクア?お願い。わたしの声を聞いて、返事をして!
なのにアクアの声が聞こえない。
………どうしたのだろう。
わたしは大切なことを忘れている。
お母様は病気で亡くなったわけではない。
じゃあどう言うことなの?
生け贄って……わからない。
どれくらい時間が経ったのだろう。
外はもう真っ暗になっていた。部屋の中は暗くとても不気味だった。
カタッ。
遠くで音が聞こえた。
こちらに近づいてくる。
わたしは慌てて家具の隙間に隠れた。
扉が開いて明かりが漏れてきた。
そして部屋の照明がつくと「隠れても無駄ですよ?」宰相の気持ち悪い声が聞こえてきた。
「貴女はもうここから出られない」
ーー何を言っているの?
「セリーヌ様の代わりに貴女にはここで暮らしてもらいます」
宰相は何処にわたしが居るのかわからないはずなのにこちらに声が向かってきている。
「居ましたね?」ニタっと笑うとわたしに手を伸ばしてきた。
家具の隙間で蹲って隠れていたのに……
「い、いや、来ないで、触らないで!気持ち悪いの!アクア、アクア、助けて!ヴィー、お願い助けて!」
恐怖で体がガタガタ震えた。
ほんの少し触れた手が気持ち悪い。
ヴィーの優しい手を思い出す。いつも優しい手に守られてきたのにこの人の手は悪意といやらしさしか感じない。
この人に捕まればわたしは慰み者になってしまう。
そう感じるくらい義弟の時よりも気持ち悪さが増した。
「クリスティーナ様!」
宰相の後ろに突然現れたのはヴィーだった。
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