第6話 名門出身?

 静けさに包まれたこの場所で、騎士団の分隊長達がレイの事について何かに気付いた。


 そして、獣人族の生き残りである少女もまた、目の前で話すレイを見て意味深な笑みを浮かべた。


「君、もしかしたらすんごい家系出身かもね」

「あぁ。『ルフェーブル』なんて騎士の名門家だぞ。一般人でその苗字を持つ人なんてまず居ないな」


 分隊長の二人、ルクとアイリスが頷きながらレイに声を掛けた。アイリスはレイに近付き、いくつかの質問を投げ掛けた。


「レイといったか、父親の名は?」

「俺が産まれて直ぐ亡くなったみたいで、じいちゃんからの情報ですけど『エア・ルフェーブル』だったはず」


「では、祖父の名前は?」

「……エリア・ルフェーブルです」


 その名前を聞いて、首を傾げるアイリスとルク。そして、雪色の髪に猫耳を生やしたルナも、あれ?という表情でレイを見詰める。


「……有名な騎士で、そのような名前を持った者は知らないな」

「……話変わるけどさ、私と剣術の鍛錬積んでみない?」

「いや、変わりすぎだろ」


 分隊長達の鋭いツッコミを受けながら、ルナは先程剣を交えた張本人レイにそう提案した。もはや彼女には、レイ以外の言葉な聞こえていない様子だ。


「レイのその力、盗賊狩りだけに使うなんて勿体ない。もっと大きい舞台で必ず活躍するだろうしね」

「……」


 彼女の言葉に少し沈黙が続いた。彼なりに考えているのだろう、じっくりと思考を巡らす。


「ルナ、この子を戦場に連れ出す気か?」

「鍛錬経由で騎士団に入れるつもりっしょ。流石にいきなり連れ出すって程バカじゃないし。……てか、レイも分かってるよ多分」


 ルナの突然の提案に、意見を交わす分隊長二人。


「……鍛錬、するよ」


 少し間を置いて、レイは返事をした。周囲の人々が驚いているが、獣人族のルナだけは、微笑んでその返事を喜んだ。


「君も来るでしょ?聞きたいことあるし!」

「……私は兄様の付き人です。どこへでもお供しますから」


 離れた所で見守っていた長身の少女。紺色の髪が鮮やかなレイの付き人ルリラも、表情を変えずにそう答えた。


 騒がしかった1日も、まもなく終わろうとしている。


 ――そして、レイのこの選択が、後にイルビア王国を始め大陸に影響を与える事を、まだ誰も知らない。

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