第2話 添い寝

 会食ではグリザリカ家とその親族が長机を囲み食事を共にした。その食事の席ではエリザベートの父であるゾルダート・グリザリカから明日から始まる学院のことや学院でエリザ様のお世話をすることを条件に私も入学すること、稽古や勉強の進捗など主にエリザ様に関係していることについての会話だった。その後エリザ様は公爵家の親戚の方と世間話などをして区切りがつくと疲れ果てたかのように自室へと戻っていった。


「もう動けないルシア」


 エリザ様は自室に戻るや否や青のドレスを着たままベッドへと横たわる。身体から力が抜けたかのように身動きが一切なくなる。


「今日も一日よく頑張りました。ゆっくり寝て疲れを癒してください」

「そうするわ。ルシアも側にいて」


 私の袖を掴みながら上目遣いで懇願される。


「承知いたしましたエリザ様。その前にパジャマに着替えさせて歯磨きしますからね」

「お願いルシア」


 私はエリザ様をベッドに座らせ、ドレスを脱がす。エリザ様の妖艶な香りと汗で滴る艶やかな白い肌に気持ちが揺らぐのを抑えて何食わぬ顔でピンクのパジャマを着させていく。エリザ様はベッドに座ったまま目を閉じている。次に歯ブラシを手にして、エリザ様の歯を磨く。


「これで終わりです。口を濯いで疲れを癒してください」


 私がそう言うと口を濯いで、そのままベッドへと横たわる。今日は忙しく疲れたのだろう。エリザ様は眠たそうに瞳が閉じていく。お風呂は明日の朝に入らせよう。


「ルシア、私の側にいて、私の手を握っていてください」


 エリザ様は寝言のようにとろけた声で私の手を握ってきた。私はベッドの横の椅子に座り、エリザ様の手を握り返す。


「明日は学院の入学ね、ルシアがいれば安心だわ」


 エリザ様は学院でマイペースすぎるが故にその鈍感さや怠慢、それに加えて誰にも劣らない美しさが公爵家の令嬢の尺に触り、嫌われて、酷いいじめにあう。そんなエリザ様は段々と心を閉ざしていく。そんな酷いいじめから救うことが学院での私の役目であり、破滅フラグから遠ざける一歩である。


「はい、エリザ様は安心して学院生活を楽しんでください」


 私がそう言うと安心したかのようにとろけた声が途切れていきエリザ様の幸せそうに眠る寝顔と吐息が1日の疲れを癒してくれた。その後、幸せそうに寝るエリザ様を見ながらゆっくりと私の瞼も閉じていき、エリザ様の手を握りながら眠っていった。

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