水はいとも簡単に

ひとが貫かねばならない的を


覆いかぶさるようにして

包んで濡らしてまうんだ


手のひらよりも大きくて

心よりは冷たいけれど


届かない頂に

辿り着けない細道に


降り 流れて

生き 渡る


循環の理に意思が宿るのなら


手のひらにすくい

喉を潤す恩恵は


何を語っているのだろうか


佇み 射る

単純な目的を


選ばず濡らすあなたは

笑っているのだろうか


深く深く 穿つことができたなら

濡れず届かない果てまで 先に行くのに


どうしても

わたしは一瞬を

名残惜しんでしまうから


いとも簡単に

すべてを濡らし


あなたは流れ去った


潤してくれた喉が渇かぬよう

口を閉じ 佇み


聞こえなかった

水の想いを射る




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