2022-07-13 お題「再会」

「出来れば会いたくなかったよ」


春田恭介……27歳。高校卒業後東京でバンドをやっていたが、全く芽が出なかったため就職のため帰省した。

山崎柊人……27歳。高校時代の春田のクラスメイト。卒業後地元で就職し、千秋と結婚した。

山崎千秋……27歳。高校時代の春田のクラスメイト。山崎と結婚した。


○電車の中

  スマホを握って座席に座る春田。他に乗

  客は居ない。荷物棚にはギターケースが

  置かれている。春田、スマホの通知に気

  付き画面を確認する。

  画面に親からのメッセージ『迎えに行く

  から駅に着いたら連絡してね』

  春田、溜息を吐く。


○田舎の駅前(昼)

  ギターケースを担いで駅から出る春田。

山崎「あれ、恭介?」

  春田、驚いて声の方向に振り向く。

山崎「やっぱり恭介だ。おい千秋! 恭介だ

 よ、高校の時の!」

  春田の方に歩いてくる山崎と千秋。

千秋「わーほんとだ! 久しぶり、恭介君。

 覚えてるかな? 同じクラスだったんだけ

 ど」

  春田、ぎこちなく微笑む。

春田「ああ、覚えてるよ。柊人も千秋も。久

 しぶり」

山崎「ほんと何年振りだよ。お前東京に行っ

 たきり、同窓会誘っても来ないしさ」

  笑いながら話す山崎と千秋に合わせるよ

  うに春田も作り笑いをする。

山崎「それで今日はどうしたんだよ? 戻っ

 てくるなら連絡してくれればよかったのに」

  春田、一瞬固まる。

春田「あー、ちょっと用事があってさ。すぐ

 済む予定だから」

山崎「じゃあまたすぐ東京戻っちゃうのか」

春田「そう、その予定」

山崎「じゃあ次また帰ってくるときは連絡く

 れよ。それとバンド、応援してるから! 

 じゃあまたな!」

  山崎と千秋、手を振って歩き去る。春田

  も手を振り返す。

  春田、降った手を力無く降ろす。こぶし

  を握り締め歯を食いしばる。

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