2022-06-01 お題「義理の親子」

『バトンタッチのその後で』


松田雄輝……55歳。オネエ。20年以上前、死んだ友人夫婦の娘を養子として引き取った。


○ベランダ(夜)

  松田(55)、ライターに着火しようとする

  が風が吹き上手くいかない。

  松田、窓から室内を覗く。

松田「そういえば、もうベランダで吸う必要

 も無いのね」

  松田、呟きながら窓を開けて誰も居ない

  部屋に戻る。

○松田家リビング(夜)

  松田、再びライターに着火する。煙草に

  火をつけ、大きく吸い込む。その後煙草

  を口から離し、溜息を吐くように煙を吐

  き出す。

松田「全く、慣れって怖いわね」

  食卓に置かれた一人前のハンバーグの上

  にサランラップが被せられている。松田

  はそれを寂しそうに見つめる。

  松田、机の上に飾られた写真立てを手に

  取る。

  写真には若い松田と女性が写っている。

松田「こう見ると、ほんっと若い頃のアンタ

 にそっくり。そりゃああんなイケメン君も

 ぞっこんになるわけだわ」

  松田、写真立てを机に戻す。テレビのリ

  モコンを手に取り、テレビを点けながら

  ソファーに座る。

松田「ほんと、アタシったらどうしちゃった

 のかしらね。一人が寂しく感じるなんて」

  スマホが鳴る。松田、ゆっくりとスマホ

  を手に取る。スマホの画面には松田と若

  い女性が写っている。

  松田、メッセージアプリを開く。画面に

  は『忘れ物した!今度彼と取りに帰る』

  の文字。

  松田、クスッと微笑み、『いつでもいい

  わよ。待ってるわ』と返す。

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