第33話 涙の意味が解らない

ルミナスさんに手を引かれてそのまま廊下に出た。


このまま寝室に行くのかと思ったら違った。


「うふふっ、リヒトくんエッチな事考えていたでしょう?」


「否定は…出来ないですね」


「本当にエッチになっちゃって、もう私驚いたわよ、まぁ良いわ、私リヒトくんから貰った下着身につけているんだけど、随分カルミーのとは違うのね」


カルミーさんは肌がやや浅黒くて…野性的だからヒョウ柄とかが似合う…と俺は思った。


それに対してルミナスさんは清楚でお淑やかだけど、実は凄いんです。そんな感じに思ったから、赤か紫か黒かで散々迷って、赤のレースだけど、凄くスケスケな物を選んだ。


恥ずかしい話、下着屋で選ぶのに1時間位掛かっていたりする。


ただ、この世界では前世と違い、こういうセクシーな下着は嗜好品で高額だからお店でじっくり眺めていても変態には見えない。


寧ろ店員さんは『買える金額持っているの?』 そちらの値踏みをしている様な気がする。


「うん、どう言うのが似合うのか、凄く考えてルミナスさんは清楚でお人やかでそれでいて凄く激しい感じがするから…それを選んだんだ…駄目だった?」


「ううん嬉しいわ、私おば…ちが…年上なのにこんなプレゼントまで貰えて嬉しい…今夜はこれ着て相手してあげる…寝かしてあげないからね」


今じゃないんだ。


「楽しみにしている」


「あれ、もしかして今からしたかったのかしら、これからカルミーも交えてちょっと真面目な話をしたいから、今は駄目よ!」


「解ったよ」


しかし、俺は…本当に二人と相性が良いのかも知れない。


嫌な話だが…他の人間じゃそう簡単に変な妄想はしない。


だが、ルミナスさんとカルミーさん相手だとどうも可笑しくなる。


2人限定でマジで俺は変態になるから15歳の体が若干怖い。


「うふふ、そんな顔しないの、夜はね…思いっきり相手してあげるから」


「そこ迄、考えていません」


「あらっ…それじゃ相手しないで良いのかな」


「ごめんなさい」


ハァ~もう勝てない。


今日は夜の誘いは断って『村の討伐』に行こうと思っていたのに…明日にしよう。


◆◆◆


「それでね、リヒトくん3人目なのだけど…」


その話か…正直いって今の状態で満足とおり越しているんだけどな。


「前にも話したと思うけど、要らないよ…今の状態で充分すぎる程幸せだからね。もしどうしても子供が欲しいなら、もう少ししてから養子を貰えば良いと思うし…血の繋がった俺の子がというなら、奴隷を購入して子供を産んで貰って、その後感謝を込めてその後の生活費をあげて解放すれば良いと思う。だけど、それも今すぐじゃ無くて、最低でも5年、なんなら10年先で良いと思っているよ」


「リヒト、ルミナスからも聞いてはいたんだけど、それマジなのか?私達が子供を作れないから遠慮しているんじゃない…違う?」


この世界は嫌な話、昔の日本みたいに『女は子供を産むもの』そういう風潮が強い。


まさか異世界で『3年子無きは去れ』なんて事を聞くと思わなかったし、特に農村部では『子供を沢山産んだ方が偉い』なんていうのが未だにまかり通っている。


その癖…これは異世界特有の変な世界観で、美女の条件にスレンダーである事が入っている。


これは恐らくエルフやダークエルフの多くがスレンダーだからかも知れない。


そんな環境で子供が要らないなんて凄く異端だ。


だが、俺はそんなの関係ない。


「この際だから話すよ…恥ずかしいから話し終わるまで黙って聞いてて! 正直言うとルミナスさんに初めて会った時、心臓を撃ち抜かれた位ドキドキした。まるで理想の女性が目の前に現れた…そう思えたんだ。変わっているのかも知れないけど…俺同い年位の子には全く興味無い…その証拠に俺が過ごしていたのは勇者パーティだから、俺の仲間は凄い美少女揃いだ。だけど、一緒に居てもときめかない。俺には他の女性とルミナスさんの違いが解る…包容力とか優しさが全然違う…上手く言えないけど、ルミナスさんの傍にいるだけで幸せに包まれた気分になるんだ…ちょっと恥ずかしいけどSEXしている時なんかこの時間が永遠に続けば良いのにって本当に思うよ」


「うふふふっ…リヒトくんにとって私ってそんななんだ…嬉しい」


「…」


「話、続けるね…それで…俺って凄く焼きもち焼きなんだよ…俺は死ぬまで『ルミナスさんの一番』で居たいんだ…女性って子供が生まれたら、旦那じゃなくて子供が1番になる…当たり前の事だけど…俺は、それが許せない…きっと子供にまで焼きもちを焼く可能性がある…だから子供なんて要らない…本当にそう思うんだよ…」


「リヒトくん…凄く嬉しい…愛されている…それは解っていたけど…そんなに思われていたなんて…グスッ…信じらない位嬉しい…ありがとう」


「…」


「だから、再会した時も本当は最初から下心満載。再婚していたらどうしようとか考えて、気が気じゃ無かった。もし再婚していたり、行方が解らなくなっていたら…そんな事ばかり考えていたんだ…思わず居ても立っても居られなくて飛竜艇つかっちゃったよ。今でも覚えているよ、初めて受け入れて貰えた時…結婚して貰えた時、凄く嬉しかった」


「リヒトくん…うふふっ、嬉しかったのは私の方…ありがとう…愛しているわ…どうしようもない位」


「…私居ないじゃん…私居ないじゃん…リヒトはルミナスだけが好きなんだ…」


ヤバい、カルミーさんが鬼みたいな顔でこっち見ている。


「違うよ、あの時ルミナスさんは未亡人…カルミーさんは人妻だもん…そういう事考えちゃいけない相手じゃない…」


「確かにそうだね、糞ケビンと結婚していたんだ」


「だけど、それでも凄く気にはなっていたのは本当だよ、ストレッチの時に胸や太腿があたると、本当にドキドキした…今となっては俺の中でもゴミ認定したケビンだけど、あの時はまるで兄みたいに接してくれていたよね…だけど心の中で『別れろ』『リア充死ね』って思う位だった。それでも流石に二人の幸せに割り込めないと思って…恋愛相手にもなれないんだ…そう思って…無理やり頑張って『大好きな姉さん』に頭の中で置き換えた」


「あははっ凄く照れる、おばさんなのにお姉さんって、しかも私の体があたるとドキドキしたなんて…なんだか気が付いてあげれなくてごめん…」


「カルミーは無頓着だから…」


「ルミナス」


「続けるね、それで再会した時だけど…最初死んでいるのかな…そう思って、頭の中が真っ暗になったよ…ハエを追い払うためにカルミーさんの手が動いた瞬間、どれだけ嬉しかったか解らない『生かす為の術を勇者パーティで学んでいて良かった』本当にそう思った。『絶対に死なせない』そう思って…本当に頑張ったんだ」


「なんだか…ゴメン…私凄く汚かったでしょう」


「別に謝る事じゃないよ…大好きな人を汚いなんて思う訳ないじゃない…だけど、凄く困ったよ…本当に自分がクズなんじゃないかと思う事があってだけど…凄く落ち込んだよ」


「リヒトがなんでクズな訳…そんな訳ないよ」


「確かにあの時クズだったんだよ、カルミーさんが泣きながら『これは…冒険者としての…グスッ…義務だからね…私みたいな助けられ方をした場合…私の所有の権利は…グスッ…リヒトにあるから…こんなゴミみたいな女要らないと思うけど…うぇぐすうぇぇぇぇ…伝えないと…ね』って泣きながら話しているカルミーさんを見て『俺の物』にして良いんだってそう思ったもん…それにケビンが羨ましかった…俺だって抱いていないのにそう思ったんだ…充分クズだよ」


「良くあの状態の私を抱こうなんて思えたね…そこまで愛してくれているのなら…それは違うと思う…多分『嫉妬』だよ! ルミナスから聞いたよ、まるで宝物を汚された子供みたいに私の事泣きながら洗っていたって…」


「はははっ恥ずかしいな」


「恥ずかしいのはこっちだよ…そのありがとう」


「それでね、ルミナスさんにカルミーさん、俺はあの状態のカルミーさんでも愛せるんだ、年取っても大丈夫…介護だってしっかり出来る…そう思わない」


「「…」」


「俺は2人が居ればそれで幸せ…3人目なんて要らないし…子供も要らない…3人で幸せに暮らしたい、それ以外は全部要らないんだよ」


「リヒトくん、グスッグスッスン…リヒトくんうぇぇぇぇん」


「リヒト、リヒト…うっうっうえあぁぁぁぁぁん」


「あの、どうして泣くの…」


なんで泣くのか良く解らない…


この後二人が泣き止むまで2時間俺は困り続けた。






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