第9話 お風呂でばったり
しかし、気まずいな…
幾らなんでもあれは無い。
俺とルミナスさんは、そんなに親しくない。
俺が一方的に好きなだけで、宿屋の主とお客の関係だ。
ただ、前に泊まったときから『素敵な人』だと俺が片思いしているだけだ。
全く、これだから…若いってのは困る。
前の世界で大人だったのが全く生かせて無い。
いや…勝手に美化しちゃいけないな…
前の世界でも…良く考えたら俺、そんなに女性と付き合っていないじゃないか?
もっと時間を掛けて、俺を知って貰ってから…告白するつもりだったのに…
あ~クソ…
◆◆◆
幾ら思い悩んでいても仕方がない。
ひとしきり悶えたら冷静になってきた。
言ってしまったからには仕方がない。
『覆水盆に返らず』
ルミナスさんは顔を赤くして行ってしまった。
だから返事は貰って無い…
普通に考えて困るよな…
自分に子供がいたら、この位だろうと思われる男の子から告白されたら、まして相手はお客なんだから…
あとはもう返事待ちか…
失敗した…返事も貰えず、そのまま放置の可能性もある。
最悪、此処を後にしないとならないな…
今、考えても仕方がないな…
風呂にでも入って、気持ちを落ち着かせるか。
ルミナスさんの宿は共用だが、この世界では珍しくお風呂がある。
温泉なのか何時でも入れる。
これも気に入っている一つだ。
お客は俺しか居ないから大丈夫だよな…
俺は風呂場のドアを開けた…
「えっ、ルミナスさん!」
「リヒトくん…」
俺が扉を開けて見たのは…バスタオルで体を拭いているルミナスさんだった。
思わず、固まり見入ってしまった。
不味い…
「なに、じっくり見ているのかな?」
「ごめんなさい…」
終わった。
これで、終わりだ…完全に嫌われた。
俺はその場を速足で去ろうとしたが、ルミナスさんに手を掴まれた。
「待ちなさい!」
そうだよな…謝ってすむ問題じゃないよな…
「…」
「そんなにおばさんの体が見たいの…良いわ、見なさい」
そう言うとルミナスさんは、バスタオルを手放した。
「…」
ルミナスさんの綺麗な体が一糸纏わない状態で俺の目に映った。
本当に綺麗だ。
幼馴染とは全然違う、前の世界の成人した大人の綺麗な体だ。
全然色香が違う。
「これで解ったでしょう? リヒトくんが期待したものじゃ無かったでしょう? 胸だって大きいし少し垂れているし、お腹だってほらね、良く見れば弛んじゃっているわ…お尻だって大きいのよ…他にも色々緩んじゃっている…おばさんの体だわ…大したものじゃないわ」
いや、これが綺麗な体じゃないなら、どんな体が綺麗だっていうんだ?
胸は大きいしお腹だって決して太っているわけじゃない…お尻なんて凄く触り心地よさそうだ。
『2.5次元』
アニメや漫画の主人公やヒロインの肉付きの良い母親とか…
そんな感じだ…
ムチムチした大人の色香がある…俺のドストライクだ。
「ルミナスさん…凄く綺麗だ…」
「えっ、ちょっと待って…リヒトくん…ストップ…ほら良く見て胸なんこんななのよ…ほらもう若くないから少し垂れていてハリもないわよ…」
巨乳で凄いとしか言えない。
「凄く綺麗で柔らかそうです…」
「ほうら、お腹なんてこんなに弛んじゃって…ねほら…」
ルミナスさんはお腹の皮を引っ張っているけど…それ位ぽっちゃりしている方が絶対に触り心地が良い気がする。
「綺麗です…」
「ほうら…お尻だってこんな豚みたいに大きいし、太腿なんてこんなに太いし弛んじゃっているのよ…ねねっ落ち着いて、絶対に後悔するから…こんなおばさん…相手にしたら絶対に後悔するから!」
「しない…俺はルミナスさん以上に綺麗な人は見た事が無いから…」
「もう…本当に困るの…私おばさんだから、本当に困るのよ」
「ごめんなさい…」
「これ…なにかの冗談じゃないのね…本気なの? 私、本当におばさんだよ! リヒトくんにお母さんやお父さんが居たら同い年位、下手したら私の方が年上だわ」
「本気です…」
「本当に困ったわ…だけど、気持ちは解ったわ…も一度聞くけど、これは冗談でも揶揄ったわけでもなく本気なのよね…」
「はい…」
「そう…それじゃ、私は服を着るわね…リヒトくんはお風呂でさっぱりして…そうね、その後話を聞いてあげるから食堂にきなさい」
「はい」
「逃げちゃだめよ」
「はい」
駄目だ…最悪だ…
もう終わりだ…
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