幼馴染み

美里

章吾

後悔、なんてものは、誰にでも一つと言わずいくらでもあるものだと思う。俺にだって、たくさんある。

 その中でも一番大きい後悔はなにかと訊かれたら、迷わずこう答える。

 なつめと寝たこと。

 あれは、中学二年生の時だった。俺となつめは、俺の部屋でゲームをしようとしていた。いつもの放課後。

 その日俺は、友達から紙袋に入れてごっそりゲームを借りてきていた。なつめがその紙袋を漁っている間、俺はテレビをつけ、ゲーム機をセットし、いつものようにゲームの準備を整えていた。

 そのとき、背後から声をかけられた。

 「章吾、これなに?」

 なつめが持っていたのは、エロゲのパッケージだった。ゲームを借りが友人がはまっていた学園ものだ。俺は苦笑して、エロいやつ、と答えた。

 「中島がはまってんだよ。」

 「へえ。」

 それだけ言って、なつめはパッケージをベッドの上に放り投げ、またゲームを物色し始めた。そして、からかうように言ったのだ。

 「章吾はやんないの?」

 「やんない。」

 「なんで。」

 「アニメの絵じゃな。」

 「実写がいい?」

 「本物がいいかな。」

 本物。それを俺はまだ見慣れてはいなかった。中学に入ってすぐにできた一つ年上の彼女。その人の身体しか知らなかった。なつめが女の身体を知っていたのかどうか、俺は知らない。なつめはもてたから、多分知っていたような気はするけれど。

 「本物ねぇ。」

 くすりと笑ったなつめが、俺の手を引いた。振り返った俺は、なつめの肩に手をかけた。目の前に、女よりもきれいななつめの顔と、細い身体があった。

 「章吾?」

 なつめがぽかりと俺の名を読んだ。

 俺はなつめの身体をベッドに引きずり上げた。

 「どうした、章吾。」

 なつめに慌てた様子はなかった。多分、いつもの悪ふざけの一環だと思っていたのだろう。おれだって、そう思っていた。まさか、小学校からの幼馴染の男を、本気で抱こうとするはずないと、自分にそれくらいの信頼はおいていた。

 けれど、俺の信頼は、そんなにあてになるものじゃなくて。

 服を脱がせようとすると、なつめは抵抗した。章吾、どうした、と繰り返して、俺の手を逃れようとがむしゃらに腕を振り回した。その指先が、俺の目にあたった。

 「あ、」

 その声が、どっちのものだったのかは分からない。両方のだったのかもしれない。とにかく、驚きと焦りでそんな声が出たのだ。

 なつめはぴたりと抵抗をやめ、組み敷かれた格好のまま、上半身を起こして俺の目を覗き込んだ。

 俺は、これ幸いとなつめのシャツに手をかけた。

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