41話:確かに壊れているショートソード
「おぉ、確かに洞窟だ」
紳士の皆ごきげんよう! 現在は時間が停止しているエッチな世界からお送りするぜ!
⋯⋯なんていうのは冗談だ。
割れ目から出てきたらと思ったら、まさか洞窟の前だとは⋯⋯。
「とりあえずストアは⋯⋯問題なさそうだ」
万が一は生成でなんとかできるかもしれないが、コインがある今、俺は色々用意できるし、試せる段階にいる。
俺は近くの岩場に腰を下ろしてストアを開き、アイテムカテゴリの中から様々なアイテムをここぞとばかりに物色する。
「へぇーやっぱりバグみたいなストアだな」
映るのは、『魔導の書(上中下)』や、『1から目指せる魔導技巧士への道』、『剣を極めるならこの一冊!羽人が教える亜天剣とは』、『錬金術を始めるならここから!』
という動画が組み込まれているものすら何故か売っている。
もはや、色々言いたいことが大量に浮かぶのだが、なんか言ったら負けな気がしてならない。
⋯⋯しかも何故か怖いのが。
「待って? 見たことあるぞ?この人」
『本人が教える
んん!?
思わず目を丸くして俺はその著書の名前を何度も見返す。
「りょ、呂布? 三国志の?」
な、なんかやばくね?
昔の人が⋯⋯今も生きてる? どゆこと!?
なんか様子がおかしいと気付き出した俺は、絞りこみから一つの箇所を発見してしまった。
『※球』、あったよ。
絞り込んだリストを眺めていくと、とんでもない物がいくつも出てくる。
「うわ」
『王とは何か:著書アレクサンダー』
『大刀はこう使う:著書関羽雲長』
もはやいっぱいあり過ぎてついていけん。
いやまずい、永遠と見てられる。
ひとまずこの気付きはデカイ。
もしかしたら、何か分かるかもしれない。
「あ、いやそんな場合じゃないわ」
アイテムを用意したい訳だから、さっさと用意しないと。
「とりあえず⋯⋯あった」
俺がまず欲しいと思っていたマナポーション。
金額は、粗悪品であれば5000コイン。
と言っても、粗悪品でも上昇自体はする。
言い方はあれだが、神が持っている物を見ているようなものだろう。コインさえあれば、少しずつでも効果は出てくるはずだ。
「上昇率は5か」
⋯⋯5?
本来なら得られない魔力を5000コインも払えば得られるというのは凄まじい効力を発揮する。
「下手をすればこれだけでも大変な価格が付きそうだな」
コチラをとりあえず10個購入。
それから以前見つけたスキルブックというのがあり、眺めて必要そうなものを購入することにした。
[駆け足]
・瞬間的に移動速度を20%上昇させる
[罠感知]
・範囲5m以内にある罠を感知することができる
[器用な手]
─熟練度が必要
・使用経験値に応じて永続的に器用さが上昇する
[闇夜の瞳]
・暗闇でも見えるようになる
とりあえずこれだけ購入してみた。
全部で八千万コイン。
器用な手と闇夜の瞳が単体でほぼほぼだった。
⋯⋯まぁ効果も凄いから仕方ないが。
「後はあれか」
俺はインベントリから『壊れたショートソード』を取り出した。
この武器、一応使い物になるみたいだし、使ってみるか。どうせ100コインだったわけだし、あのページを見る限り100ページ分位壊れたやつだったから替えは効くだろう。
「さて、ここまでなら十分だろう。いざ冒険!」
誰もいないのに独り言ばかり呟いている俺はやはりボッチだったわけだな。
***
すげぇスキルだな。
俺は入ってしばらく買ったスキルをバカ褒め称えていた。
だって真っ暗なはずなのに、なんか、当たり前のように見えるんだもん。そりゃビックリするよ。
洞窟は今の所表立って何かが変わった様子はなく、真っ直ぐ一本道だ。しかも特別ゴブリンに襲われることもない。
⋯⋯さて、今後どうなるかが心配だが。
「ん? 罠か」
感覚としては頭の中で急にアラームが鳴り響くような感覚に近い。
地面を見ると本当に錆びてはいるものの、しっかりとしたトラバサミだった。
ゴブリンの知能まぁまぁ良さそうじゃね?
それか、ダンジョン的に仕掛けられていたトラップだったらいいだろう。
あくまで初心者用として今回は突入しているからそこで心配ないだろうけど、やっぱり心配になるよなー。
にしてもせめぇ。
人2人分くらいじゃないと通れない洞窟って洞窟なのか?
そのまま洞窟の狭い道も終盤。
遂には体を横に向け無ければ通れなくなるまで狭くなり、胸を少々掠れながら前へと進む。
あまりに痛くて死にそうだったが仕方ない。
お、出れたっぽい。
そうして出れた先は、ダンジョンなのか本当に怪しくなるほど⋯⋯綺麗な星空であり、周りは高々とそびえる山っぽい中に円形上にくり抜かれた場所が俺の出た所だった。
まるでこの場所だけの為に円形にくり抜いたみたいだな。
『キキッ!』
『ギゥッ!』
その瞬間、俺の頭の中で気配探知が警鐘を鳴らし、身を屈めた。すると数秒と時間が掛からずに上で矢が通り抜けた。
「⋯⋯ぶっね」
地面に刺さった矢にはドロドロとしたものが付着していて、それがおそらく毒だと察した。
もし俺が気配探知を身に着けてなかったら、刺さって詰んでた。
ダンジョンモンスターのお出ましだ。
目では追いきれないほど高い場所から数匹のゴブリンがスノボをするかのように滑り落ちてくる。
数匹のゴブリンは替えの矢筒を持っており、俺はすぐに人数を減らさないとマズイと察した。
「こういうのは先手必勝だよな」
ここで俺は『壊れたショートソード』を使用してみたいとインベントリから取り出して、ゴブリン達に向けた。
「おぉ⋯⋯やっぱり古代の剣感あっていいな」
持手は普通なのだが、剣先は折れており、パッと見短剣と思うくらいまでは短くなっている。
使えるのかは定かではないが、検証がしたいんだ。
「──その方が、冒険者感あっていいだろう?」
我ながらとんでもない厨二病感丸出しでゴブリンたちへと突っ込む。
一気に駆けてゴブリンの目の前に到達した瞬間、右肩目掛けて振り下ろそうと俺は振りかぶる。
短剣のような剣先が空間を裂き、狙い通りゴブリンの右肩へと到達したのだが、まさにその瞬間だった。
──ドォォォォォン!!!!!
まさに上級魔法が発動したかのような地響き、そしてとんでもない風圧と土埃が舞い、思わず下がってしまった。
「あれ?」
持っている剣に目を向けると、剣先が無い。
「え? もう壊れたのかよ!!」
そんな一回だけなんてことある!?
なんて俺が思っていた時、目の前の土埃が晴れ、絶句した。
まさに自分が振り切った地点辺りから50mくらい先まで、まるでドラゴンが飛ばすようなブレスの跡が俺の視界を奪った。
「こ、これ⋯⋯俺が?」
剣術スキルを持っているわけではない。
確かこの武器のステータスは全然強いわけじゃなかったはず。
「こっ、⋯⋯え?」
思考回路パンク。
俺はその光景を見てからしばらく、ただ呆然と眺める事しかできなかった。
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