34話:夢かな?
あぁ⋯⋯ここ一週間くらいでいろいろな出来事があったなぁ〜。
「黄河さん」
意味不明なダンジョンに、自殺しなければならないくらい強いダンジョンボス。
「黄河さん、もう朝ですよ」
それに報酬かは知らんけど、無駄に強すぎる適合とかいう謎の機能を手に入れて、
「ちょっと黄河さん!」
「⋯⋯はい?」
あぁ、今のは夢だったか。
「黄河さん⋯⋯もうお昼前ですよ?」
寝ている真上からは──女神のように俺を見下ろす素晴らしい三神さん。まさか俺の家にい⋯⋯⋯⋯
「んん!? おはようございます!!」
「おはようございます、黄河さん。朝ごはん、いえお昼ご飯はもう出来ていますよ」
これが現実か! なんてことだ!
おはよう、ハニー。とか言いたいけど、現実問題そんなの無理すぎる。
「あ、ありがとうございます」
「もうっ、いつもこんな時間まで寝ているんですか?」
あぁ⋯⋯ラブコメの主人公はいつもこんな待遇を⋯⋯。
羨ましい⋯⋯なんて思っていたが、俺はその願いを叶えたのである!
「今起きます〜」
「洗顔料と魔導具で作った美肌パックです。使ってください」
「ええ⋯⋯? お高いんでしょう?」
現実問題、魔導具はどれもクソが付くほど高いのだ。
この間も、なんか使えそうなのをないかと探していたら──どれも死ぬほど高くて開くのをそれ以降やめた。
「ええ、ボーナスで購入しましたよ」
「受付のお仕事ってそれくらい稼げるんですね」
三神ハニーからパックを頂いて顔面オバケ状態になりながら、俺はハニーの話を聞く。
「特に、指名料やその他の要因がかなり多いですが」
「その他の要因?」
「はい、まぁ⋯⋯その、言いづらいんですが、容姿⋯⋯とか」
「あぁそれは失礼しました」
さすがにそれは自分から言うのは嫌だろうな。
だが確かに。
三神さん!
肩まで伸びる黒髪に、眼鏡が似合うようなクールビューティーだ。
そんでしかも膨らみはたわわわわなほど。
そして──いつもの服装とは違って、スウェット姿の三神さんがこの目に焼き付けれる日が来るなんて⋯⋯!!
「生きててよかったぁ⋯⋯!」
「え? 黄河さん? ちょっと!?」
ごほん。
「それではそれでは、いただきます」
それから10分程経過した後。
俺は三神さんと遅れた昼食をとることに。
「三神さん」
「どうしました?」
いや、突っ込むところではないことは分かってる。
うん。そうなんだけど⋯⋯。
「料理の腕──トンデモ過ぎませんか?」
「そうでしょうか? 普通の朝食では?」
え? これが一般人の普通だって?
キラキラ輝いている緑色のスープ。
素晴らしい加減の焼けた食パンの匂い。
「これはなんていう料理なんでしょうか?」
「あ、これはグリンピースポタージュで、こっちはベーコンエッグトーストです! 最近私がハマってて⋯⋯」
「結婚しませんか?」
「⋯⋯へっ!?」
何だこの女子力の塊は!?
あんな事務仕事をこなしながら一流料理を!?
嫁力というか、なんというか⋯⋯。
「ではでは失礼して」
⋯⋯っ!?
「うんま!」
「本当ですか?」
「めちゃくちゃ美味いです」
朝食というのはこんなにも最高の味をしていたのか。
俺はタブレットを付けて、動画サイトを開く。
「あ⋯⋯」
「どうかしましたか? 黄河さん?」
一緒に一つの動画を見ながらご飯食べる。
これはまさに夫婦じゃなかろうか。
⋯⋯じゃなかった。
今見ている動画が、この間のユニークダンジョンの件について言及されている動画だった。
『約1ヶ月前から起きたユニークダンジョンについて回答してください!』
『大亜クラン人事部としては、早急な開示を求めます!』
『こちらもだ』
『私も気になりますね』
「ネットではもうこんな事になってたんだ」
「そうですよ? バレてすぐ⋯⋯こんな事態ですからね」
それだけユニークダンジョンの報酬や入った人間が気になるっていうところか。
『えー八王子支部の五香です』
「あ、ギルド長だ」
「こうやってみると、かなりイケメンなんですけど⋯⋯」
「ギルド長性格が悪いんですか?」
「いえ? こんな硬い人ではないので、変に見えるんですよ」
あぁ、プライベートを知っているとわけわからなくなるあの現象ね。
『現状、該当冒険者との話し合いが終わり、大方の方針を決めました』
動画越しに記者たちのざわめく声が聞こえてくる。
『報酬の公開はなし。意図はどのように解釈してもらって結構です。しかし、ゼロというのも皆さんがご納得しないのもまた事実ですので、素材とだけ⋯⋯と、ご本人から言葉をいただきました』
『エブリデイ新聞の者です。特別なスキルなどは無かったのでしょうか?』
『本人からは素材とだけお聞きしました』
「確かにこう見るとギルド長イケメンですね」
「でも、昔死ぬほど遊んでたらしいから、評判はトントンなの」
「へぇ、イメージ通りって感じですね」
「それがどういうわけか──急に一途になって恋すらしなくなった仕事人間になったってわけですよ」
⋯⋯そんな人間もいるんだなぁ。
その後、質疑応答が始まり、記者の質問に五香は答えていく。
様々な質問に五香は不満の表情などを見せることなく乗り切り、いよいよ最後の一言を喋るシーンになった。
『ギルドとしては、これから行われるオークションに大々的に登録している物がありますので⋯⋯是非お金持ちや投資家、"生産者"の皆さんはチェックしてみてください。きっと⋯⋯目から大量の涙がこぼれ落ちる事でしょう』
⋯⋯わお。大胆。
この間の話で聞いてはいたが、まさか本当に言うとは。
「オークションなんて、金持ちのためのイベントで見る気になりませんよ」
「まぁお金持ちの娯楽と思えばいいんじゃないでしょうか? でも黄河さんの素材が売られると、今後大変な事になりそうですね」
それは間違いない。
だってギルドのやり取りで一億も払い出すんだ。
いくら俺が馬鹿だと言っても、なんとなく分かる。
利益のないやり取りをする理由がないものに提案なんかしないだろう。
「ある意味、ここで俺が持ってきた報酬の真の価値が分かるってことですよね」
隣で手を合わせながら頷く三神さん。
俺ももうぺろりと平らげ、皿を片付けようとすると、三神さんが回収してくれてすぐ皿を洗いだす。
「ありがとうございます」
「いえ、いつもやってる事ですから」
⋯⋯うん。同じ一人でもここまで違うと、なんか心が辛い。
「三神さんはどうするんですか?」
「何がですか?」
「いや、さすがにここに住んだりするのはしんどいでしょ?」
「黄河さんが良いと仰るならここに半分くらいは寝泊まりしようかなと思っていました」
こんな美女が⋯⋯? 俺の家に泊まる?
「あ、いいんですか?」
「あっ⋯⋯なんか変な事想像しましたね?」
やべバレた。
「あはははは」
「大学生の年齢的に考えれば、適切な反応でしょうから問題ないです。それよりも、若さ故に無謀な事をするのを止める方が優先です」
「無謀?」
「私が居なくて少しくらいならと家から出て誘拐や拉致なんかの事故が一番危ないですからね」
本人よりもしっかり考えてくれてるのはなんか嬉しい。
俺もこれを機に、なんか家事スキルでも上げてみるかぁ。
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