オタクにやさしいギャルいる?orいない? A.いる
禿田……じゃなかった。生田が本当に禿げていることが公然の事実となった日から気がつけば1週間が経っていた。1週間という時間はあっという間で、今まで生田と呼んでいた人も禿田と呼び始め、クラス外までそのあだ名は広がって言った。女子に絡まれることも多くなり禿田は満足そうだ。サッカー部の三馬鹿もより親密度がましたようでよく、
俺は遂にFFをクリアした。今はこの余韻を楽しみたい。とてもいいストーリーだった。まさしく
「楽しそうなところ悪いんだけどさ、早く校庭行かないと遅れるよ?」
「おっと、それはまずいもう球技祭だし、クラスのやつら盛り上がってるからな。万が一にも遅れてしまったらあの手この手で俺を詰めてくるに違いない。」
アイツらの盛り上がり用は異常だからな。普通そんな気合い入れてやるか?いや、楽しんでやるけどさ?そんな血なまこになってやるものでもないじゃんね?
「でしょ?まぁ、1週間がすぐに過ぎてしまうって話は分かるけどね……目に見えて分かるよ」
~~~~~~
放課後。今日はいつも通り帰るのではなく、カラオケボックスへと来ていた。それも私から友達を初めて誘って。
「あっゆりっち」
「ごめん鳳花。待たせちゃったかな?」
「いや、まじ今来たとこだしー、ゆりっちの誘いならまじ秒で来る的な?」
私の素を見せることの出来る少ない……いや、唯一の友達である
えっと何だったかしら……そうだ『うちみたいなギャルと優等生が一緒にいるとー変な噂が立つかもだからーオケカラでおk?』と言っていた。変な噂が何かはわからないが私に不都合な何かが起きる可能性があったのだろう。全く、何も考えていないようなギャルの成りをしてその実いろいろなことを考えている思慮深いいい子なのだから。いえ、見た目でどうこう言うのはよくないわね。かくいう私も優等生の仮面をかぶった悪い人なのだから。
「なーに考えてるん?」
「鳳花が見た目とは違っていい子だと考えていただけよ」
「えぇ!突然何言い出すん?!てか、ゆりっちだって皆の前と全然違うじゃん?」
「うっ……だって、そうやって生きて来たから」
「もー、そのままのゆりっちで良いよ!っていつも言ってるじゃん?」
「だからあなたの前では自分を取り繕うことをやめたじゃない」
「他の人の前では?いってみー?」
「うぅ、鳳花の前だけでも辞められただけで私にとっては大きな一歩で」
「はぁ、まだまだ先はながそー。ま、何かあったらウチに言ってよー、ね?」
……なるほど、悟られている。私が呼び出したことなんて今まで無かったし、少し考えれば分かることよね。
「その……なんて言ったらいいのか分からないのだけど……私気になるんです!」
「何にも興味を示さなかった孤高の姫様が気になるなんて何に気になったのかな、かなぁ?」
「目が離せないの……何をしているのか気になってしまうの。ねぇこの感情は何?」
異様にドキドキしながら話を切り出す。鳳花に見せていた私の素直な気持ちもまだ本心ではなく殻……そう、地球という大地を取り巻く大気でしか無かったのかもしれない。だから私は裸で、草木さえも取り除かれた大地を見られてドキドキし、恥ずかしさを感じているのかもしれない。
「ゆりっち」
常にニコニコし、笑い顔を崩さない鳳花が珍しく……本当に珍しく真面目な顔をする。まぁ、その目の奥は何かペットを見るような……孫を見るおばあちゃんのような優しい何かを秘めているのが少し気になるけど。
「それはねーーー恋だよ」
「こい?鯉……それとも故意?」
「あっはっは、故意に言ってるっしょそれ!恋、Love、あ・い・し・て・るの方に決まってるっしょ」
「私が……恋?」
「そう、まー実は知ってたんだけどねー。ゆりっちのことだしーまた自分の気持ちを隠しちゃうかも?って思ってたんだけどー……そんなことなくてまじ安心」
恋……あの人三矢彩雫君のことが気になる。この気持ちが恋なの?でも確かにこの間見た漫画でも『ドクン!なんなのこの気持ち、これが恋?!』と似たような展開があった。それとこの状況を比較すると……なるほど、これが恋。
「私が恋をするなんてね」
「ゆりっちも普通の女の子だったってことっしょ?」
「むぅー今までが普通じゃなかったと?」
「普通じゃないっしょー、周りの人がイメージする八重百合を作り上げるとかーどこの世界の普通って感じー」
しょうがないじゃない。私にも私なりの考えとか面子とか色々あるのよ。その面子だって守りたくて守っている訳じゃ無い、周りに期待されるから。その声を無下にすることは出来なかった……いや無下にしようとも思わなかった。しょうがなかったのよ。もう何回も私がこの癖を治せなかったことを知ってるでしょ?いっつも治せ治せ言うのは鳳花なのだから。
「いやぁにしてもー、うちもびっくりしたっての。廊下で見かけたゆりっちが恋する目をしてるんだからねー」
「うそ、そんな分かりやすかった!?」
「うちはすぐわかったけどねー、ゆりっちが作ってきた仮面に守られて他の人は分からないって感じ」
鳳花は内心を見抜くのがとても上手いから……とは流石に言えない。けどそれなら……
「でもぉママンに言われたことは何でもその通りにするゆりっちがママンに隠してまで少女漫画読んでることを知ってるうちからすると以外でもないんですけどー、ほら?乙女なところあるって意味で?」
「乙女?!そ、そんなイメージもあったなんて。……確かに否定は出来ないかもだけど!ねぇ、私は今後どうしたら……」
「もーゆりっちまじかわなんですけど!これがピュアってやつ?」
「もう、からかわないで!」
「ごめんごめん、どうしたらいいのかって話っしょ?そんなの簡単簡単。ありのままのゆりっちで行けばなるようになるっしょ!自分の気持ちに素直であればその気持ちが実っても実らなくともゆりっちにとってはいい経験になるって」
「そう……ありのまま、自分の気持ちに素直で……なるほど」
言われたことは今までと同じような、私がすぐに仮面を作り自らの表情を意見を隠してしまうことを辞めない?ということ。今までは鳳花にいくら言われても正直やめる気は無かった。でもなぜだろうか、今回の言葉は頭にすんっと入ってきて『できるかも』とそう思わせてきた。
「ねぇ鳳花。いつもありがとうね」
「ちょ、やめてやめて。うちそういうのまぢ無理って知ってるっしょ?でも、力になれたならよかったし」
「えぇ、これからもよろしくね、じゃあ歌いましょうか!」
話すことは話したし……あとは明日からに備えて
きっかけはいつだって些細なもので、何がフラグになるか分からなくて、そんな単純なもので……それなのにたった一言が、何か大きなフラグとなって、単純な世界に彩を与え―――そして人を変える雫となる。そう、きっかけとは往々にしてそんなものである。
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