【Web小説感想2】『魅了が解けた世界では』暮田呉子
これは悪役令嬢が断罪され追放されてからの話です。
物語は王太子がヒロインを妃に迎え、子供までもうけた後に『魅了』という呪いにかかっていたことを知ってショックを受けるところから始まります。
『魅了』とは「人の心をひきつけてうっとりさせること」。
乙女ゲームをベースにした『婚約破棄』ものだと、悪役令嬢より身分もスペックも落ちる女が、なぜか数多くのイケメンクズを夢中にさせてしまいます。
その意味不明な展開の理由付けに『魅了スキル』を使う作者さんは多いです。
この物語ではヒロインは無意識に、いわばパッシブスキル扱いでした。
それでも報いを受け不幸になりました。
はっきり言って性格悪かったもん。
嘘の告発で悪役令嬢を陥れ、その事実を知った王太子に追及されても開き直り、断罪された時の彼女の絶望的な顔が傑作だった、みたいなことを言うんだもんね。
無意識にせよ『魅了スキル』なんて持っている奴は、基本的には性格悪いね。
まあ、それもそのはず。
幼いころから努力しなくても他人が自分の思い通りに動いてくれ、ちやほやしてくれるんだから、認識も歪むわな。
それにしても『魅了』って考えようによってはマジで怖いですよ。
乙女ゲームをベースにした恋愛ものの『魅了』だと、せいぜい攻略対象の男や周囲の人から甘やかされ得よねってくらいですが、国ぐるみの話で、ある人物が人々の激情に訴える演説の中に『魅了』という呪いが入っていたとしたら……?
どことは言わないけど、歴史的には、そう推測してしまいたくなるような話がありました。
物語でも、ヒロインの『魅了』能力によって、元婚約者の王太子をはじめ彼女のシンパたちは無実の悪役令嬢を、その女は『悪』なのだからどんなむごい仕打ちを与えてもかまわないと断罪当時は思っていました。
とある時代のとある国においても、その民族は『悪』だから根絶やしにせねばならないとまで国民が思うようになっていました。
怖いくらいに相似形だわ。
物語では、本当は愛していた、あるいは慕っていた悪役令嬢を追放してしまったことを、王太子たちをはじめとする断罪ダメンズが後悔し、魅了ヒロインが現れる前のことをなつかしんだりするシーンもあり、悲劇的なのだけど、かかった人間はただの被害者なのだろうか?
ヒロインが魅了を無意識に発していただけでも罪に問われたように、かかってしまった者たちにも問題はあったのではないだろうか?
たとえば、魅了にかかりやすい精神的な弱点とかね。
そう言ったことをつらつら考えながら作ったのがこちらです。
『刻の短刀クロノダガー ~悪役にされた令嬢の人生を取り戻せ~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330661763119370
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