僕の婚約者は今日も麗しい
蒼あかり
第1話
「クラウスさま~」
銀色の髪を左右に揺らし、手を振りながら軽やかに走り駆け寄ってくる美少女。
「ローザ。走ったら危ないよ。転んだらどうす……」
「あっ!」
小石につまずき転びそうになる美少女を、軽やかに両手で抱き寄せると、
「ほら、危ないだろう。まったく、お転婆さんだな」
そう言ってクラウスはローザを抱き上げた。
「ごめんなさい。クラウス様の姿を見たら、早くおそばに行きたくて、つい」
はにかむようにクラウスの腕の中で俯くローザに「まだ、高いヒールは慣れないかな?」と、わざとらしく煽ってみせた。
「そんなことはありませんわ。もうすっかり慣れましたのよ。靴擦れもしなくなったし、体重のかけかたも覚えたわ」
自慢げに話すその顔が可愛らしくて、クラウスはローザの手を取り歩き出すのだった。
「もうすぐローザもデビュタントだ。やっと一緒に夜会に参加できるね」
「ええ! とても楽しみだわ。しっかりエスコートしてくれるのでしょう?」
「ああ、もちろん。皆に自慢して回るのが楽しみだよ」
「まあ。うふふ」
薄っすらと頬を染めるローザを見つめながら、クラウスは腹の底から安堵していた。
『やっとここまで来たか。長かった……』
決して口にしてはならないその想いをぐっと飲みこみ、愛らしいローザに笑みを返すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます