幽霊城の黒豹 Magic&Sword Kingdom
キャメルライト
Ⅰ.
PROLOGUE
見事に悪人面ばかりね。あなたのお友達?
ああ、親睦を深めるのはこれからだ――――
――――月明りの下、男達は働いていた。波止場につけた船から身を乗り出し、一つ一つの先に首輪についた鎖の束を引く。
「おら、とっとと来やがれ」
先に繋がれているのは、獣のようではある。が、人の姿もしており、しかも全員が、まだ年端もいかぬ子供等であった。
「また犬猫の獣人か。もう少し珍しいのは、捕まらなかったのか?」
話し掛けたのは、高そうなスーツで決めたマフィアのような風体の男。船の連中もまともな人種には見えず、そいつらを率いていたボスが、前に来てこう言った。
「旦那、無茶は言わんでくださいよ。こいつらを捕まえるだけでも苦労したんだ、こっちは」
「それはこちらも同じ。毎日のように苦労している。一番の取引相手が、こういう普通の獣人には飽いておられるようでな」
「だとすると、やっぱり――アレですかい?」
「ああ。どこかには必ずいるはずだ。見つけ出せ。そうしたら高級車を好きなだけ乗り回せる額を用意してやる」
「ひゅー、そいつは豪気な話だ」
聞いたか、お前らと手下共に向かい、ボスは大きな声を響かせ、直後雄叫びのような歓声が、波止場にこだました。
「うぉおおおおおおおおお――――」
背後から近づいてくる、小さな足音に彼らは気付かない。水を差すような拍手が送られてきて、やっと気づいた。負けず劣らずの悪人面の男が、そこには居た。
――――パチパチ、パチパチ
「よう、兄弟。随分楽しそうなことやってんな。俺らも混ぜてくれよ」
「誰だ! てめぇっ!」
「俺か? 幽霊だよ」
「ふざけてんのかてめぇ! 俺らの獲物を横取りしに来やがった同業者か!」
「ちげぇよ。いや、違わねぇか。横取りって部分は合ってるからな。――ミーク、雑魚は任せていいか」
傍の物陰、そこから女のように化粧を施した長身の男が姿を現わし、彼の隣に並ぶ。
「もう、人使いが荒いわね」
「まぁそう言うなって。フォウ、てめぇはそっちのガキ共だ。人質にでもされたらめんどくせぇ」
ほいよーと声がしたと思ったら、子供等の足元、そこに伸びる影から突然女の子が飛び出してきて、両腕から伸びる不気味で大きな黒い腕を、うにょうにょと動かし始める。
大きな動揺が、男達の間に起きた。顔に恐怖の感情覗かせながら、一人が声を震わせ問い掛ける。
「なんなんだ。なんなんだ、てめぇらはよぉっ!」
「さっきも言ったじゃねぇか。幽霊だよ。幽霊城に住んでるな」
握り拳振りかざし、駆け出し巻き起こる大喧嘩。正義のヒーローのように登場した彼らではあるが、別に正義の執行人という訳ではない。金で動く、ただの探し屋だ。
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