第20話 王女にライバル視される
ずっと待っていても、大魔法使いさまを囲む人垣は増える一方だ。久々に姿を現した英雄と声を交わしたい人は多いのだろう。
もう少し待つ? まだ贈り物は渡せていないし。
私は浮かしかけた腰を椅子に下ろした。
「そこのあなた!」
「え? 私?」
目の前に黄色のドレスを着た少女が立っていた。薄茶の髪を腰まで伸ばしている。ヘボ王子……アーサー王子とよく似た顔をしているから第一王女か。
確か、年齢は私より二歳年上の十八歳だったはず。美形家族の一員のおかげで顔は整っており大人びて見えるが……。
王女は閉じた扇をピシッと私に向けた。
「その席、大魔法使いさまゆかりの席ですわ! あなたは何さまですか?」
「え? 大魔法使いさまゆかりの席!?」
素っ頓狂な声が出てしまった。私と同じく大魔法使いのファンである、ロウからもらったチケットだ。
ロウったら、大魔法使いさまにゆかりがあるなら最初に言ってくれたらよかったのに。
私に言っていないだけで、大魔法使いに何らかの関係があったとしてもおかしくはない。もしかして従兄弟とか、そんな親戚筋かもしれない。
「知らなかった顔ね!? ……それなら、まあいいわ」
私の反応を見て、王女は扇を開いて口元を隠した。それでも頬が緩んで安心したような顔が見える。
まさか私が恋敵とでも思っているのだろうか。それは、ないない。
「魔道具屋のお兄さんに譲ってもらったの。そのお兄さんが大魔法使いさまの関係者かもしれないわ」
「魔道具屋のお兄さんという人が大魔法使いのゆかり……? そんな情報、初めて聞いたわ。どんな関係者なのかしら……」
「さぁ……?」
王女は考え込んだまま訝しげな顔をしている。
特に知らないから何も言えない。本人のロウに聞けば何かわかるかもしれないけれど。
私からは何も引き出せないとわかったらしく、王女は扇をパチンと閉じた。
「これから大魔法使いさまと会食ですから、私は忙しいですの。あなたはただの冒険者のようね。今後は会う機会はないと思いますが、ごきげんよう」
棘のある言い方だ。胸元の冒険者バッチを見て、Bランクの普通の冒険者だと判断したのだろう。
ま、こちらも失礼な王女さまとは積極的に関わりたくないから、会う機会がないのは嬉しいことだけどね。
「ただの冒険者ですが、王女さまとお話しできて光栄でした。それでは失礼します」
嫌味には嫌味で返すと、王女さまはプイッとそっぽを向いた。
まあ、単純な王女さまですこと!
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