聖女様の嫁入り 〜若き少女たち〜
秋伯(しゅうはく)
プロローグ 選ばれた少女たち
「おはようございまーす!!」
私は、部屋中に響き渡るほど大きな声を出しながら入った。
部室には、先輩がポツリと椅子に座りながら本を読んでいた。
ワクワクな気持ちを持ちながら、自分の席の場所に座り仕事を始めた。
すると、後ろの方から足音がして振り向くとそこには先輩が私のことを見下していた。
私何かやらかしたかな……と思いながら見つめ合っていると、先輩は言った。
「……うるさい」
「すみません」
私は即座に謝った。先輩は、気が済んだのか静かに元の場所に戻って行った。
本当に、あれだけを言うために近づいたのだろうか。と考えながら目の前の仕事に取り組むのだった。
何枚か書類を片付けていると、部室のドアが開いた。
入ってきたのは、同級生のゆいちゃんだった。
私は、立ち上がりドア付近に立っている少女ゆいに抱きついた。
「ゆいちゃん!!」
「あら、来てたのね。影が薄くて全くわからなかった」
この同級生は、私に対して辛辣である。いつも、部室に入り抱きつくと撫でながら辛辣な言葉を投げかけてくる。
毎回、どう対応すればいいのかわからずにいたが、今日こそはゆいちゃんに勝とうと思いながら言った。
「ひどいよ……ゆいちゃん」
涙目で言うと、ゆいちゃんも気が付いたのかハッとした顔をしながらポツリ、ポツリと言葉をこぼしながら……
「そう……そうだよね……まだ、足りないよね……もっと……辛辣な言葉考えとくね……」
「違うよ!!」と、反論するもゆいちゃんは私を振り落として自分の場所に座ってしまった。
悔しいが、これが私の定めなのか……と思いながらトボトボと席に戻ると、再び部室のドアが開いた。
ものすごい大きな音を立てながら入ってくるのは、この部室の部長である先輩の睡蓮先輩だった。
睡蓮先輩は、入る時は元気だが部室に入ると元気がなくなる。どうして、元気がなくなるのかはわからなかった。
椅子に座りながら、みんなの様子を伺っていると睡蓮先輩言った。
「どうしただ櫟?」
「いやー、なんだかこの部室に入って一ヶ月入るけど全然自己紹介したことないなと思って」
睡蓮先輩は、ハッとした顔をしながら言った。
「確かに!!」
そう言い、ホワイトボードの前に行き何か文字を書いて言った。
「さぁ!みんな自己紹介をしようではないか」
だが、誰も反応しなかった。名の知らない先輩は本当読み続けるて、ゆいちゃんは机の上の書類類に手を加えていた。
私はと言うと、何もしていない。ただ、ぼーっと部室の全体を見てだけであった。
すると、睡蓮先輩は無理矢理にみんなを一箇所に集めてホワイトボードをバンっと叩いて言った。
「さぁ、自己紹介をしてもらおうかな?」
しかし、誰も反応しなかった。ただ、めんどくさいからシカトをしているだけなのか……全く二人の表情からは読み取れなかった。
呆れた、睡蓮先輩は胸に手を当てて言った。
「私から行きまーす。私、
「はい!!私は
小さな拍手が、部屋中に響き渡った。そして、次は名の知らない先輩になった。
先輩はめんどくさそうに、本を閉じて言った。
「私は、
そして、最後は同級生のゆいちゃんであった。
「……私は……
全員の自己紹介が終わると、睡蓮先輩は言った。
「では、これからよろしく──」
言葉が途切れた。なぜなら……
「皆様方、お揃いのようで何よりです。では、これから施設に向かいますのでご同行願います」
私はたちは完全に忘れていた。
私たち四人は、国指定の『神の怒り』を鎮めるために選ばれた、か弱き少女だったことを。
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