トイレにて

 あれは、旦那と一緒にバイク屋に行った時のことです。


 私はお腹が大変なことになり、お店のトイレをかしてもらう事態になりました。私はトイレに駆け込み、無事、用をすませてスッキリです。しかし、その後、私を悲劇がおそいました。なんと、拭いている途中で、トイレットペーパーの芯がカランと鳴ったのです。


 そう。紙切れです。


 予備があるはずだと辺りを見回すのですが、どこにも見当たりません。ドアの外、数メートルのところには、店員さんと旦那がいます。助けを呼ぼうと思えば、呼べない距離ではありません。しかし、他に人がいないとはいえ、私には「トイレットペーパー切れました!」と叫ぶ勇気はありませんでした。


 私は、さいわいなことに、トイレにスマホを持って行っていました。そこで、旦那に電話をかけて助けてもらおうと思いつきます。しかし、旦那の携帯はなぜか留守電モード。一コールで自動音声が流れます。


 今度は、有名なメッセージアプリで、助けを呼ぼうとするのですが、どんなにスタンプを連打しても既読がつきません。店に電話をかければ出てくれるとは思うのですが、電話番号どころか、店の名前すら分かりません。


 緊急事態です。


 これは、いつまでも出てこない私を心配して、誰かが様子をうかがいに来るのを待つしかないのでしょうか? そう思って絶望していた時に、トイレのドアがノックされました。


 救世主の登場です。


 ノックの主は旦那で、店員さんがトイレットペーパーを取りに行っているので、少し待てと言うことでした。


 そして、待つこと数分。もう一度、旦那がドアをノックして、トイレットペーパーが届いたと言います。私はカギを開けると、念願のブツを手に入れることに成功しました。


 私は、スッキリとしてトイレの水を流そうと、タンクの横にあるレバーを回しました。その時、私は見たのです。タンクの上にトイレットペーパーがあるのを! タンクは便器の真後ろ。体が固く、立ち上がることも出来ない私からは、全く見えない位置にあったのです。


 私は、トイレから出ると、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、店員さんに謝ります。しかし、店員さんは優しく、これからは、もっと目立つ場所に置くようにすると言ってくださいました。


 これで、めでたしめでたしです。


 しかし、私が旦那を許すことは一生ないでしょう。

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