地球を救え! 俺と阿修羅と異世界転移
鈴片ひかり
第一章 絶望と邂逅
来訪者
最初の目撃者には、国会中継を見ていた視聴者も含まれていた。
国会での予算委員会において、それは突如現れる。
野党の論客が舌鋒鋭くドヤ顔で与党の閣僚を追求している矢先のこと。
まばゆい光に皆が悲鳴と呻きをあげている中、彼らは出現した。
白地に金刺繍の入ったローブを身に着けた、いかにも賢者然とした白ひげをたくわえた老人。それにお付きの者と思われる美しい女性が二人。
すぐに警備を担当していた警官がやってきたが、彼らは抵抗をせずこう言ったのだった。
「我らは異世界からの使者であります。この地の代表とお話がしたい」
警官が取り押さえようとするも、不思議な力で弾かれ賢者然とした老人は、手の中で水を作り出すとそれを空中でうねるような水流を作り出し、予算委員会の会場を縦横無尽に走らせたのだ。
結局のところ、多くの議員が三味線担いで逃げる羽目になり、腰が抜けて動けなかった一部政治家と総理、他肝の据わった官僚数名が予算委員会室に取り残される形になった。
当初この件は国民に秘匿しようという動きもあったが、官僚が吐き捨てるように言った発言ですぐに消し飛んだ。
「国会中継されてたんですよ」
賢者然とした男は、自らをワグニールと名乗った。
異世界 ルーザリア からの使者であるという。
「結論から申しますと、我々の世界の魔王がこちらの世界へ干渉しようとしています。このままでは、この地は数年後滅びることになるでしょう。既に気付いている方もおられるのではないでしょうか?」
この数時間後、NASAアメリカ航空宇宙局経由で、地球へのコリジョンコースへ入った小惑星が数週間前に確認されたという情報がもたらされた。
予測衝突時間は、6年後の 12月24日。
天体規模は月の半分。
地殻は抉れ、地球人類の滅亡は間違いないという情報だった。
これには時の内閣も動揺した。
正確な軌道計算が必要ではあるが、およそ5年後。
「ですが、解決策があります。諸悪の根源は、我々の世界で誕生してしまった魔王なのです。奴を倒すことができれば、この世界への干渉ゲートが消失し天体がずれる可能性も高いでしょう」
時の総理大臣、金森静雄は震える声で問うた。
「であれば、なぜこの地球へあなた方はやってきたのですか?」
ワグニールは豊かな白ひげを撫でながら、こう答えた。
「魔王を討伐できる優れた素養を持つ人たちを、我が世界へお招きするためであります」
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