第65話 設計図
投票について、よく考えてみたら親会社の社長が数百億数千億クレジットを費やして支援している政党の政治家が選挙で通らなかったら色々と不味いから子会社の従業員まで全員上に従う、みたいな風潮が出来るのかと納得したところで、本日はエレーザ星系を離れてエマーレ星系まで移動。
正直エレーザ星系の様子が分からなくなるから移動するのは超不安だけど、出来るだけ早く戻って来るし、いざとなったら逃げるよう留守番役のイチカには指示を出して置く。……この空母は早々簡単に落ちないだろうし、レプリコン側はシレーネ星系で激戦があったっぽいから大丈夫だろう。
「さて……テラニドカンパニーから戦闘機の設計図を買うぞ」
「……十五億クレジットで足りるの?」
「分からん。艦船製造モジュールも建てないといけないから貯蓄分だけだとかなり苦しい」
フィアと一緒にエマーレ星系まで行く目的は、艦船製造モジュールの建設を始めるために、戦闘機の設計図というかライセンスの購入が主だな。流石にこの辺のライセンスとかは直接やり取りしないと買えないようで、結構めんどくさい。
そして戦闘機毎に、エンジンの設計図やら武装の設計図やらがバラ売りという罠。自動操縦のソフトとかまでバラ売りだからセットで売ってくれよと思う。
……この宇宙の艦船には、自動で操縦出来る機能がある。オート航行やら自動運転やら呼び方は色々あるけど、目的に応じて、ある程度使い分けることも出来る。例えば前の船について行きたい時には追従のオート航行を選択しておけば、勝手について行ってくれるね。
ぶっちゃけ要らない機能だけど寝る時も自動運転してくれるのは凄く楽。宇宙が広いから直進しながら寝るという芸当も出来なくはないけど、当然ながら自動運転の方が安全だ。……となるとここら辺のソフト面もケチることが出来ないのでライセンスの総額は相当な価格だろう。
「テラニドカンパニー、エマーレ星系支店にようこそ。本日は何をお求めでしょうか」
「戦闘機のライセンス」
「……A棟の27階にお進み下さい」
戦闘機のライセンスを買いに来たというと、びっくりしたような顔を受付の人はするけどすぐに案内してくれた。そういうものもまで売っていることはこちらも把握済みだし、案内に従って移動すると眼光が他のテラニド人とは違って蛇というか鰐みたいな人が出て来た。というか普通のトカゲ人間よりも一回り以上大きい。
あ、これお金で身体強化とかしている人だな。センイチちゃん含む護衛は数人連れて来ているけど、万が一戦闘になったら自分の命は助からないわ。……そんなことにはならないとは思うけど、2メートル超えのワニ人は対面すると恐怖を感じるよ。
で、一通りパーツを揃えて、強い戦闘機が作れる設計図を買い集めると大体10憶クレジットは必要だった。これに艦船製造モジュールの設計図も合わせて12億。いやこれ船体部品を製造するまでの工場が丸々タダで手に入ったの本当に大きかったなあ。
……というかここで10億クレジット分の戦闘機を買ったら普通の戦闘機が1000機は手に入るんだよな。あと一括で買うよりロイヤリティ払う方が基本的にはお得なんだけど……長い目で見たら買い切った方が良い。ロイヤリティ払う方の契約だと指導とか監査とか面倒だし。
自分達で艦船作るという選択肢を作るなら、設計図は必要。そしてここで、値下げ交渉を開始。
「……ヒノマルサイクツが戦闘機をテラニドカンパニー以外には販売しないという条件を加えた場合、何割引かれますか?」
「……こちらとしてはあの量の資源を軽々と納品するヒノマルサイクツ様が戦闘機の販売を開始した場合、北東第四セクターや北西第四セクターで戦闘機の売り上げが何割落ちるのかと不安でしたが、『戦闘機についてテラニドカンパニー以外に販売しない』という条件であれば設計図は2割引かせていただきます」
「6割引いて」
「えっ」
「いや別にラドン連邦の数ある艦船販売会社の中から戦闘機のライセンスを買って、その戦闘機の廉価版を大量販売してもこちらとしては良いわけですし。うちの採掘量が異常なことは理解してますよね?」
「いえまあ理解はしていますが……6割ですか……」
とりあえず、自分達で作った戦闘機は自分達でしか使わないから設計図を安くしてと伝えたら相手の人は悩みに悩み抜いた末、半額という条件を出して来たので「おまけで戦闘機10機の納品よろしく」と伝えて商談成立。一応、ステーションに置いておく予備の戦闘機なんかも欲しかったから都合は良かった。
「よくテラニドカンパニー相手にあれだけ値切れたね……」
「いやまあ向こうも怖かったんじゃない?うちが戦闘機作って売り始めたら今までの市場価格より遥かに安価で売られるからテラニドカンパニーの戦闘機も間違いなく売れなくなるし」
「確かに戦闘機を構成するパーツの量と、ヒノマルサイクツの採掘量を考えたら戦闘機は1機50万クレジットで十分利益が出るから向こうも戦々恐々だったって感じだね。テラニドカンパニーは1機90万クレジットで買い取ってくれるそうだけど……これ利益率は凄い事になるね」
これでいよいよ戦闘機を幾らでも増やせるようにはなったんだけど、その前に人員増やさないといけないから新しい孤児院の開拓を始める。まずはフィアが紹介状を貰ったという孤児院に行って、あとは事前にアポを取れた孤児院を順番に巡る感じかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます