第10話 昭和の遊び道具① 四つ手網

 森緒家が東京浅草から千葉県松戸市に越して来た頃、松戸はまだまだ田舎だったね。


 市街を外れた北側エリアは、田んぼが続く水郷地帯だった。

 田んぼの間には用水路が多く走り、農家の裏手にはそこを行くための小舟が浮かんでたりしていたぜ。


 街の釣具屋は「四つ手網」という漁具を売っていて、子供の財布で買える程度の額だったから、みんなそれを使って小川や用水路で魚をとって遊んだよ。


 メダカやクチボソなんかは雑魚だったから川に捨て、フナやタナゴやドジョウなどを持って帰った。


 現在は水郷地帯は宅地になり、田んぼは消え、タナゴは絶滅、街の釣具屋も見なくなった。


 SDGsなんか叫んでみたってあの楽しかった遊びは帰ってこないぜ。

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