田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

一章 田舎暮らしの神殺し

序曲 神殺し 其の壱

「お前らが俺たちを弄ぶなら俺が、人類を救う。神よ、お前達の時代は終わりだ」


 傷だらけの少年は無数に横たわる屍の上で最後の神を殺す前に喋りかける。


 人型の屍、獣の屍、様々な屍の山には、一人たりとも人は居らず、彼は一人、たった一人でその神々を殺し尽くした。


「あははは、そっか、そうだねえ。君はたった一人、たった一人で僕達を神々を殺し尽くした! その執念! その妄執! その強さ! 君は神に最も近い人に成ったんだ! なら、嫌われるだけだよ。人間は自分達と違うものを嫌うからね」


 悪戯に笑う戯神を見下しながら、男はその問いの、その言葉の意味を全て知っていた。


 故に、迷いなく応える。

 ヤツが、戯神が嫌う答えを。


「俺はお前らと一緒に歴史から消える。それなら誰にも迷惑かけないし、誰にも傷つけられない」


「良いのかい? 名誉も、地位も、誰に讃えられる訳もなく、誰に好かれる訳でもない! そんな人生に君は殉じると言うのかい? 人らしからぬ願いだな! 神ですら名誉も、地位も欲するのにお前は何も求めないのか?! 無償で、人類を救うと言うのか?」


 戯神は憤りを感じていた。

 男の言葉に、男の無欲に怒りを覚え、それを彼にぶつけるも男は何も思わない。


「それはお前らに全部奪われたからな。人の人生ぶっ壊しといてよく言うよ。まぁ、それはいい。あばよ、クソ神、お前のことは大嫌いだが、お前との殺し合いは悪くなかった」


 言い終えると共に戯神の首に握り締めていた剣を振り下ろした。こうして人知れず、神の時代は終わった。


 夜明けと共に人々は神に自身の身の安全を、自身の命の安保のために祈る。いつも訪れるであろう神が訪れず、不穏な空気が漂う中、とある兵士が確認のために神の住まう城に足を踏み込んだ。


 そこに広がるは血と惨劇。

 神々の死骸の山々。


 兵士は屍の山を見て、その首の一つを取り、人々の前に持って行った。


「俺が、殺した! 神は俺が殺した! 祝え! 人類の時代が、人類の夜明けをこの俺、アグニ・アポカリスが告げる!」

 

 創神期2023年、神々の時代に終わりを告げ、創人期の始まりとなる。

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