第50話
リーは危険物取扱施設の中で小型超素粒子変換装置の分解をしている。
施設はコンクリートと鉄の壁で封鎖されており、リーは画面に映る超素粒子変換装置を、人間の指のように器用に動くロボットアームを操作しながら、機械の表面から分解を始めている。
そこへ、大型画面の右側にある小さな画面に知っている顔が浮かんで声がする。
「やぁ、リー、調査の具合はどうだい」
「ルーじゃないか、どうしたんだ? 君がやって来るなんて夢にも思わなったよ」
「そうかい? セクター1の第3管理棟からお呼び出しがあってね。ついでに第2管理棟へ行ったら、君は此処だって教えられてね」
「今、奴を分解中でね。良かったら入れよ」
「僕みたいな素人が入っても良い場所なのかい」
「ああ、君だったら大歓迎だ。何も危険はない。怖がらずに入って来いよ」
「そうさせてもらうよ、差し入れもあるからね」
「そりゃ、有難い」
リーが内側からセキュリティーボタンを押すと、一枚目の扉が開き、再度ボタンを押すと二枚目の扉が開いた。
「何か分かったかい」
ルーは、施設へ来るまでに買ったのであろう自動販売機で売っていそうな缶珈琲を差し出しながら尋ねた。
「おや、珍しいじゃないか。君が超素粒子変換装置に興味を持っていたなんて思ってもいなかったよ」
リーは、缶珈琲のプルタブを開きながら言う。
「簡単なことさ、君がまるで一人でやっているような調査に興味を持った、ということだけだからね。で、進んでいるのかい」
「ああ、間違いなく、ここには先住民が居た。そしてその先住民達は、今の俺たちの科学力を既に超えていた。全て俺の想像だけどね。いずれ考古学調査班や電子工学班が証拠を掴むよ」
「勝手な空想っていうところかな? その装置の方はどうなんだい?」
「分解するまでに非破壊検査で分かったことなんだけどね。ここまで小さくすることができた装置が凄いんだよ。素粒子を集めるために、俺たちは集積装置、つまりパラボロアンテナみたいなものを使うんだけど、こいつはそうじゃない。表面が素粒子を受け取るように加工されているんだ。それだけで装置の大きさを1/10に縮小できる。それだけじゃない。先ほど届いた電子工学調査班の話じゃ、洞穴の中で発見されたコンピューターの各ブロックが俺たちのコンピューター一台分だってさ。俺たちが扱っているコンピューターが、指先で操作できるような電卓にまで圧縮されているんだ。どこでどう滅びたのか分からないけど、生きていたら地球なんてとっくに植民地さ」
「その民族は、滅びたのかい?」
「そりゃそうだろう。既に俺たちが住んでいるのに何も起こらないなんて、彼らが許すわけがない。いや、その前に言ったろ、地球は奴らの植民地だって」
「怖い話だね」
ルーはそう言うと、静かに微笑んだ。
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