第39話



 まず最初に、持ち帰られた扉を調べていた古代文字解読班から連絡があった。

それは、扉をより詳しく調べようと、まだ残っている土を洗い流していた時のことであった。

地球には無い表記が現れたため、至急、古代文字に詳しい科学者が招集され、文字の解読に当たることになった。

彼らの第一報は、


「確かに文字のようです」


であった。


 コンピュータを調べていた電子工学班からの一報も同じようなものであった、


「キーボードの文字が判読できない限り、詳しいことを言えるような段階ではありません」


 その他、さまざまな分野の研究者達から連絡はあったが、どれもこれも同じような報告ばかりであった。


 そんな進捗の無い報告の中で、唯一、オーエンを驚かせた報告があった。

たまたま、コンピューターを調べていた科学者が、頭髪のようなものを見つけ、遺伝子分析を頼んだところ、回答が返ってきた、


「確かに、頭髪のようです。遺伝子解析しましたところ確かに生物の髪の毛であると思われますが、地球上の生物では無いことが分かりました。生命体の骨格がSiC、つまり炭化ケイ素です」


 この報告を聞いたオーエンは、SF小説を思い出した。

つまり、そのような生物は存在しないと言うことである。


「ファンナ、どの報告もまるで進捗がない。唯一だ、今の状況の中で急遽作られた病理学研究班からの報告が、生命体の構成成分が炭化ケイ素だ。信じられるかい?」


 オーエンは、主任調査員に語りかける。


「今の所、それはあり得ない、としか言いようがありませんが、もしそうだとしたら・・・、やっぱり理解できませんわ」


「私が言いたいのは、そういうことじゃないんだ。宇宙には、人類では計り知れない事実が存在する。それをあり得ないって言う、その底辺にある理論は何だい? それは私たち人類が共通に持っている常識なのじゃないかな? あり得ないのかどうかを解決するのが私たち科学者の仕事だ。小さな常識に捉われず、まだ知らない新しい世界を解明したい。そう思うのが科学者だとは思わないかい?」


「では、教授は炭化ケイ素骨格を持つ生物の存在を信じるのですか?」


「違うな。肯定をしている訳ではないんだ。しかし否定する前に、その存在なら、どうやって生まれ、どうやって生命活動を維持して、存在し続けて行けるのか、それを解明するのが科学者だと思うんだよ」

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