第2話
誘拐されて、なにもする必要がない(しても意味がない)と考えた私は、寝そべっていた。
部屋の角っこに柴犬のシールを見つけた。かわいい。すき。
あー、なんだか涙が出てきた。なにも悪いことはしてないはずだ。多少人に不快感を与えてしまったかもしれないが、人はそういうもので、受けとる側の感性なんて、一定ではないから越えないようにするのは難しいだろう。
嫌いなら見なきゃ良い。
そんなことも出来ない大人子供が増えてんだろうな。…巻き込まれてる私かわいそうだな。
涙が床に落ちたので、その涙で床に柴犬のシールを描いていると、
「ガチャガチャゴン!」
とドアが開いて、人が入ってきた。
犯人…ではない。手首は結束バンドで縛られている。
中くらいの高さで1つ結びにした髪。
一重の目。に普通としか言い様のない鼻。おちょぼ口。うーん65点!ウマヅラハギに似てる気がする知らないけど。
ウマヅラハギ『あなたも誘拐されたんですか?』
アナウンサーのような発音だと思った。
私『はい。』
ウマヅラハギ『にしてはリラックスしてますね。』
私『いえ、今涙で柴犬を描いているところです。』
ウマヅラハギ『雪舟か!』
私『いえ、手で。』
ウマヅラハギ『どうでも良いです。脱出するための努力をしましょう。手伝ってください。』
私『何か出来ることがあるんですか?』
ウマヅラハギ『この部屋にはありませんが、私の部屋にはあと2つドアがあります。
どうなっているか確認しましょう。』
私の部屋に有った唯一のドアを出ると右側の壁と左側の壁にドアがあった。
何度も何度も体当たりさせられて、
左のドアは開かないことが分かった。
疲れたので、一旦自己紹介をすることにした。
『私は、数学の教師をしている、
宋田というものです。数学は嫌いです。』
『私は社会の教師をしている、
城ケ崎というものです。社会は好きです。』
アナウンサーかと思ったが、同業だったらしい。ウマヅラハギというあだ名ついてたりするのだろうか。
簡単すぎる自己紹介が済んだところで、次のドアに取り掛かることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます