第29話 一線を…超える?

 那月さんと『69』を楽しんだ後、今回のHはお開きになった。姉ちゃんとになってしまったが、互いに納得してるし誰にも迷惑をかけてないんだ。


これは俺達3人だけの秘密だな。墓場まで持って行かないと…。



 それから数日後。俺達は銭湯『千夏と千春』にやってきた。姉ちゃんが発案したので、俺と那月さんは誘いに乗った形だ。


フロントにある受付に向かうと、胸が大きくてすごく若々しい女性が1人いる。名札には“古賀 千春”と書かれているが、この間の人じゃないぞ。


「いらっしゃい♪ うちは初めてかしら?」


「いえ2回目です。この間は別の人に案内してもらったんですが…」

那月さんが答える。


「別の人? …千夏ちゃんの事ね。今呼んでくるわ♪」

古賀さんはそう言うと、受付後ろにある扉を開けて中に入っていった。


多分、入った先に事務室とかスタッフルームがあるんだろう。



 …古賀さんが呼びに行って5分ぐらい経ったが、未だに戻ってこない。


「遅くない?」

那月さんがしびれを切らし始める。


「焦らず待ちなさい。忙しい中来てくれるんだから」


姉ちゃんは落ち着いてるな。


「はいはい」


それからさらに数分後。さっきの扉が開く。


「悪いわね、Hのキリが付かなくて…」


こっちの人は“千夏”と言うようだ。一応覚えておこう。


「アンタ達、この間の…」


「あたし達の事、覚えてるんですか?」


「もちろん。そっちのアンタが仕切りの事を訊いてきたからよく覚えてる」

古賀さんは姉ちゃんを指差す。


そんな話もあったな。聴くまで忘れてたぞ(13話参照)


「あの時はワガママ言ってすみません…」


「別にそれは良いけど、まだ準備できてないのよね~」


「仕切りのことはもう良いんです。気にせず入りますから」


「へぇ~。あの湯着のおかげで距離が縮まった感じ?」

古賀さんはニヤニヤしながら、俺と姉ちゃんを見る。


「そうなんですよ~。良い湯着持ってますね~」

那月さんが話を膨らませる。


「どんな人間も、エロには逆らえないのよ。真面目そうなアンタの牙城を崩すには、ちょっとしたきっかけがあれば十分」


古賀さんの言う通り、あれをきっかけに姉ちゃんはおかしくなったな。…本性をさらけ出したと言えるかもしれないが。


「あの時、温泉内でHした?」

古賀さんが俺達3人の顔色を伺う。


「ついしちゃいました~♪」

開き直って答える那月さん。


「ぜっんぜん問題ないけどね。あそこは温泉として使うのはもちろん、〇ブホとしても使って欲しいから」


「太っ腹ですね~」


「アタシはエロを愛する人の味方だから!」


こんなふざけた事を堂々と言うなんて、この人只者じゃないぞ…。



 「あの時一皮むけたなら、今日もむけるかもしれないわね。アンタ達に一応渡しておこうかな」


そう言って、古賀さんは俺と姉ちゃんにを渡した。


「え、これって…」


俺も姉ちゃんと同じように驚いている。その理由は言うまでもない…。


「アタシの勘だけど、まだ入れた事ないんじゃない?」


「そうですけど、私と涼介は姉弟ですからそこまでは…」


「アンタ達姉弟だったんだ。だとしても、れば良いじゃん?」


「えっ?」

この人、自分が何言ってるのかわかってるのか?


「姉弟だからこそ盛り上がるんじゃない? この世に異性は数えきれないぐらいいるけど、姉弟はアンタ達しかいないでしょ?」


つまり、姉ちゃんの代わりはいないって事か…。


「そう言われると、姉弟って貴重な存在ですよね~」

話に割り込む那月さん。


「アンタの言う通りよ。アタシに弟か兄がいたら、“Hの相手をしてほしい”ってお願いしたわね。絶対に」


この話を聴いて、姉ちゃんはどう思ったんだ? 気になって確認したら、目が合ってしまった。…すぐに逸らされた。どういう意味なんだよ?


「後はカギさえ渡せばOKよね? …はい」

古賀さんは俺にカギを手渡した。


「入れるうんぬんは置いといて、女を気持ち良くさせるのは男の仕事よ! 頑張りなさい!」


「はい…」

こんな激励あるのかよ?


そう心の中でツッコんだ後、俺達は貸し切り温泉に向かうのだった。



―――次回、いよいよ最終回―――

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