第9話 小さな違和感

 俺と那月さんは、近くのスポーツクラブで水泳を始める事にした。行く時間帯は平日の放課後か祝日だ。お互い1人で行く気はないので、2人の事情を考慮した結果になる。


今回の水泳で、初めて那月さんのセパレート水着姿を観た。私服や裸とは違うエロさがあってドキドキするが、他の利用者の前で動じてはいけないな。


那月さんも俺の水着姿をジロジロ見てきたが、触ってくることはなかった。しかし目付きはエロかったので、1対1なら触ってきたに違いない…。


俺達はフリーレーンで好きなように泳いだが、お互い上手な人のフォームと全然違う事に気付いたので、1からレッスンを受ける事にした。下手なフォームは恥ずかしいし、無駄に体力を消費するからな。


その担当は細マッチョのお兄さんだったんだが、やはり筋肉量と頼もしさは比例するように感じる。楓さんの話を抜きにしても、筋肉は付けておかないと!



 正しいフォームを習得してからは、自信を持って泳げるようになった。自信がつくと泳ぐのが楽しいな。那月さんも同じ感想を持っていたのが嬉しいところだ。


それからコツコツと水泳を続けた結果、俺達の体に変化が訪れた。以前より明らかに引き締まった体になったのだ。…なかなか良い感じじゃないか。


那月さんの外見もさらに磨きがかかったな。他にも…。


「那月さんの、前より締まりが良くなってますね。気持ち良さが段違いです」


「でしょ♡ 水泳で鍛えたおかげだね♡」


水泳後に那月さんの部屋でHすることがある。彼女が誘うのはもちろん、俺から誘うのも珍しくない。水着姿の那月さんがずっとそばにいれば、ムラムラしても仕方ない…よな。


この連戦も、俺の体力向上に一役買ってくれた。那月さんに「前よりだいぶ頼もしくなったよ♡」とお墨付きをもらったが、これからも水泳を続けるつもりだ。


それに彼女も同意し、何事もなく過ごせると思ったんだが…。



 ある日の祝日。水泳の用具が入ったカバンを持って自室を出た時に、廊下にいた姉ちゃんと鉢合わせた。


「涼介。今日もスポーツクラブに行くの?」


リビングで食事中に、俺の外見の変化に気付いた母さんが色々訊いてきたので、姉ちゃんは俺が那月さんと一緒にスポーツクラブに通っているのを知っている。


「ああ」


「那月と一緒だから続いてるかもね。 1人だと三日坊主になったんじゃない?」


「確かにそうかも」

知り合いがいるとやっぱり心強い。


「2人はどんな運動してるの? ランニングマシーンとか?」


「違う、水泳だよ」


それを聴いた瞬間、姉ちゃんの顔色が一瞬で変わった。


「水…泳?」


「うん」

水泳ってメジャーだよな? 何でこんな反応されるんだ?


「水泳って事は、お互い水着になるわよね?」


「当たり前じゃん。服着たまま泳がないって」

着衣水泳は、万が一の予行練習みたいなものだろ?


「…あんた、那月の水着にデレデレしてないでしょうね?」


さっきから反応がおかしいのは、これが原因か!


「してないって!」

本当はしてるが、今の姉ちゃんの前では口が裂けても言えない。


「ふ~ん…」


これ以上追及されるとボロを出しそうだ。さっさと逃げないと!


「姉ちゃん。そろそろ約束の時間だから行くよ」


「そう…」


俺は姉ちゃんから逃げるように家を出た。

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