第5話 彼女達の意外な繋がり

 那月さんが残したメモで、彼女の連絡先を知った俺。姉ちゃんは那月さんの現状に対し『Hのことで頭が一杯』という辛口コメントを出した。


本当のところはわからないが、疎遠だった那月さんとため、俺は彼女の家にお邪魔することにした…。



 ……那月さんの家の前に着いた。小学生の頃、玄関先まではお邪魔したことあったっけ。彼女と仲が良かったのは姉ちゃんであり、俺はオマケのようなものだ。


深呼吸してから呼鈴を押そうとした時、不意に玄関の扉が開いた。


「涼君、早く入って来て~」


「は…はい」


情けないところを見られたな。時を戻せないからどうしようもないが…。



 お邪魔してからは玄関で靴を脱ぎ、那月さんに付いて行く。そして2階のある部屋に入ったので俺も続く。


「ここがあたしの部屋。涼君が入ったのは初めてだったよね?」


「そう…ですね」

人生初の女性の部屋だ。ついキョロキョロしてしまう。


「涼君あちこち見過ぎだよ~。興奮しちゃう♡」


興奮? 恥ずかしくなるの間違いでは?


「もう十分、部屋は観たよね♡」

那月さんは俺をベッドに押し倒す。


「那月さん。俺、そういうつもりで来た訳じゃないです!」


「え~。じゃあ、どういうつもりで来たの?」


「昔みたいに気さくに話したいんですよ」

本当にできるかわからないけど…。


「男の子と女の子が仲良くなるならHでしょ♡」


これは姉ちゃんの言う通りだな。俺にどうこうできる話じゃない。


「…気になる子が、頭から離れない感じ?」


正直なところ、そこまで笹森さんが気になる訳じゃない。他の女子に比べたらって感じだ。


そもそも、俺は笹森さんと話したことがない。遠目で観た印象だけで判断してるし、俺が一方的に気にしてるだけだ…。


「涼君。その子のこと教えて!」


「どうしてですか…?」

急に何を言い出すんだ?


「その子が涼君にふさわしい子かチェックしたいから。声かけたりしないし、もしバレても涼君のことは言わないよ」


そう言うが、尾行するんだよな…? じゃないとチェックできないはずだ。


「教えて教えて教えて~!」

子供のように駄々をこねる那月さん。


「…絶対バレないようにしてくれますか?」


「するよ。約束するから」


「……笹森ささもり かえでさんです」

ついに言ってしまった。口が軽いのは俺の方かもな。


「え? 笹森?」


那月さんが意外な反応をした。どういう事だ?


「知ってるんですか?」


「あたしと涼華が所属するゼミに笹森って人がいるんだよ。笹森 健人けんと君って言うの」


もしその2人に繋がりがあるなら、健人さんはお兄さんになるな。


「人違いかもしれないから、何とも言えないけど…」


「確かにそうですね…」

今の話を聴く限り、2人は仲が良い感じじゃないな。


仲が良かったら、妹のことぐらい知ってると思うからだ。


「笹森君に妹の事を訊いておくよ~」


…ニヤニヤしながら言う那月さんが気になるが、俺はどうすれば良い?

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