第7話


 “秘密を知っている”というと、語弊があるかもしれない。


 彼が知っているのは一部だけだ。


 彼には伝えてるんだ。


 「私」には2つの人格があって、時々、性格が変わるんだって。


 さっき「そっちの方」と言ってきたのは、つまりそういうことだ。


 二重人格の片方。


 コインの表と裏で言うって言うと、「裏の方」。


 彼はすぐにわかるみたいだ。


 今、“どっちの人格”なのかって言うのが。


 まあ、彼に限らずだが。

 

 

 話を戻すと、私は「何にでもなれる」。


 猫だろうが犬だろうが、人間だろうが、なんでも。


 それは裏を返せば、「自分」という姿を持たないものでもある。


 私は生まれた時、“姿”を持たなかった。


 透明な液体そのものだった。


 それが「姿」だと言えば、そうなのかもしれない。


 けれど私には「色」がない。


 「形」がない。


 他の誰にも見えない透明人間のようなもので、自らの意思で「他の物質」になりきらなければ、私という「存在」を認識することは困難だろう。


 世界が「境界」を持たないように。


 現実と夢が、互いに交わることがないように。

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