ソルンツェ

珠邑ミト

永遠



太陽のにおいで眼がさめ

片手に月をにぎりしめたままだったことに

ようやく少年は気がついた


逃げることもせず

まっしろに色をかえて

月は、ただ少年の手の中にいる

ただ、にぎりしめたまま忘れただけだったのに

月は律儀に少年の手の中にいた


少年は狼狽し

月の顔をのぞきこむ

月は、ただ幸せそうに

少年の手の中で眠っていた


もう帰れない

夜空に輝く白銀の

日ごとに姿を変える

あの美しい〈月〉には


少年は罪悪感におびえた

これからずっと

月を抱きしめ続けなければならないことに

太陽のにおいは

月自身からただよっていた


ついうっかり

月をにぎりしめたまま忘れてしまった

それが、結婚のはじまりになった

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