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「宮森。……大切な話があるんだ」
花村睦は改まって実を見るとそう言った。
「その話はもう終わっただろ?」
実は言う。
「違う。その話じゃなくて、今度のはまた、別の、……いや、別じゃないんだけど、違う話」と少し恥ずかしそうにしながら睦は言う。
「別じゃない違う話ってなに?」実は言う。(実はそろそろ家に帰りたくて仕方がなくなっていた)
「えっと、……それは、その……」睦は言う。
そんな風に言葉を言いよどんでいる睦を見て、「俺、そろそろ帰るよ。相談には乗ったしもういいだろ?」と言って、実はカバンを持って、自分の席から立ち上がろうとした。
すると、「待って!」と予想以上に大きい声で睦が実のことを止めた。
睦は声だけではなくて、その手を伸ばして、実の学生服の端っこを手でつかんで、実をどこにも行かせないようにしていた。
睦はひどく真剣な表情をしている。
そんな睦を見て、「……わかったよ。そんなに大きな声出さなくてもいいだろ」と言って実は自分の席に再び座った。
「……ごめん」睦は小さな声で言った。
「いや、別にいいけどさ」実は言う。
それから、二人は少しの間、沈黙した。
実は睦が黙っている間、窓の外に咲く満開の桜の姿をじっと見ていた。……それから少しして、ようやく睦が再びその口を開いた。
「……宮森。私」
睦はじっと実の顔を見つめる。
睦の目はなんだか少しだけ潤んでいるように見えた。
……花村。泣いている?
そんな花村の顔を見て、実は少し(いや、かなり)動揺した。
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