第5話 筆記試験
今日は試験日なので僕達は例の学園の前にいる。
この学園の名前はゼネトラタ魔法学園というらしい。
中々に変わった名前をしている学校だ。
しかし来る途中にミリーゼから聞いた話しによるとこの学園は世界でも有数の魔法名門校だそうだ。
だからなのか来ている人の数も尋常ではない。
さらに凄いのがこの学園はとてつもなく広いということだ。
一度自分の家の何個分あるのかと想像してみたが途中で途方もなかったのであきらめた。
つまりはそれほどでかいということだ。
当たり前だが来ている人は本当に知らない人ばかりだ。
どっかの貴族みたいな人もいればよくわからない人もいる。
こういったところは前世の時とはあまり大差がないように感じる。
しかしそんなことを感じているのも少しの間だけの事だが。
「レイル様、あっちですよ!」
僕は手を掴まれて受付まで引っ張られていく。
こんなことしなくても普通に歩けるのだが。
「受験票をお出しください」
受験票…。
そんなものは誰からも受け取っていない。
どうすれば!?
僕が内心焦っていると、
「どうぞ」
ミリーゼが受験票を渡してきた。
どうやらミリーゼが僕の分も持っていたらしい。
「受験番号542番のミリーゼ・オルウェイと受験番号543番のレイル・アスカリッドですね。このまま筆記会場2年Aクラスへ向かってください。座席番号は教室の前に掲示しております」
ミリーゼってオルウェイって言うのか。
てか僕のフルネーム、レイル・アスカリッドなんだ。
知らなかった。
とりあえず言われた場所に向かうか。
「レイル様、どこでしょうね。Aクラス」
「どこだろ」
若干迷子気味になっていると在校生らしき人が僕達に声をかけてきた。
「二人はもしかして受験生かな?」
「はい、そうです」
「ちなみにどこのクラスって書いてあるかな?」
「2年Aクラスって書いてあります」
「ならここをまっすぐ行った先にあるよ。わからなくても上を見れば看板に書いてあるから。じゃあ頑張ってね!」
なんて良い先輩なんだ。
こんな後輩にも優しくしてくれるなんて。
あぁ〜優しい世界。
「じゃあ行きましょう! レイル様!!」
「行くか」
僕たちは先輩が教えてくれた通りにまっすぐ進んでいくと吊るされた看板に2年Aクラスと書かれたものがあった。
それとその教室の廊下に座席も書かれていた。
僕とミリーゼは受験番号が近いから隣同士だった。
「ここだ」
「行きましょう!」
そっと僕達は教室に入った。
そして指定された席に行き座る。
辺りを見回すとまだ始まってはいないが既にたくさんの生徒が席について本を読んだりしていた。
それにしても懐かしい。
僕も高校受験の時は会場に来てもひたすら参考書とか読んでたな。
そんなことを思っていると後ろの方で誰かが会話している内容が聞こえてきた。
「この学園の筆記って結構な人数が落とされるんだろう?」
「らしいよな。先生も厳しい人が多いらしいし」
「なんだか怖くなってきた…」
この学園ってそんなに筆記の方、厳しいのか。
聞いていた話しと違うのだが!!
でも僕なら多分、そう多分どうにかなる気がする。
席についてから数分が経過すると扉を思いっきり開き手をたたきながら女性が教室に入ってきた。
その女性は長い黒髪でところどころ髪がボサッとしていた。
そして少し汚れた白衣を着ていた。
「全員出してるもんをしまえ」
周りのみんなは急いで出していた物を片付ける。
「今回ここの試験監督をするマリネ・ラウヴァールだ。よろしく」
先生は白衣のポケットに両手を突っ込みながら話し始める。
「まず初めに基礎学力テストを行う。その
ちょっとこの先生苦手かもしれない。
それに不正があったら放り出されるのか。
恐ろしいこの学園。
「残り58秒だ。この用紙を後ろへと迅速に配れ」
迅速に配らせるなら早めに配っとけよ。
もしかしてこのギリギリになってテスト用紙を渡してくるのは全国共通?
いや全世界、全異世界共通なのか。
そんなことを考えていると僕のところにも用紙が配られそれを後ろにまわす。
これを見ると前世を思い出す。
テストなんて悪魔でしかなかった。
「残り14秒で開始だ。中に解答用紙も入っている。合図後確認するように」
余裕なのはわかってるけど試験ってなるとやっぱり緊張するな。
それにしてもミリーゼは本当に大丈夫なのだろうか。
「それでは開始」
そして試験開始の合図がなる。
みんな一斉に用紙のページをめくる。
やっぱり簡単だ。
最初は数学というより算数だ。
足し算に引き算…。
もはや懐かしすぎて涙が出るレベルくらいだ。
1+1、それが学への第一歩だ!!
数学みたいなところを数分で片付けた僕は次の教科の問題にうつる。
これは恐らく国語だ。
国語もどきみたいな問題だ。
作者の伝えたいことを書き記しなさいか。
これ系の問題って異世界にもあるんだな。
ちょっと意外。
試験開始から15分が経過。
「随分余裕のようだな。受験番号543番」
えぇ、普通、試験中に先生が話しかけてくるか。
「不正はしてないみたいだな」
これもしかしてなんか疑われてる?
そんな疑われることしましたか!?
「ふっ。その先が楽しみだな」
そういうとマリネ先生は教室の後ろの方に行ってしまった。
一体何がしたかったんだ。
いきなり話しかけてきてそれでいきなり消えていくとか。
もはや試験妨害行為!
すると僕の後ろの方で大きな音がした。
「おい、お前。手を止めろ」
どうやら後ろで他の受験生が先生に絡まれていた。
「手を止めろ。ペンを置け。やめろと言っているんだ。話しがわからないやつだな」
先生は言うことを聞かない生徒の解答用紙を奪いその場でビリビリに破いた。
「お前、何を!! 俺は貴族だぞ! 父さんに言えばお前なんか簡単に!!」
「ふっ。だから何だ。不正する方が悪いだろ」
「な、なんでそれを」
「ガキのクソみたいな魔法に気づかないわけがないだろ」
あの先生は受験生の不正に気づいてそんな行動をしたのか。
僕には魔法とか何も感じ取れなかった。
「で、でもだからと言って破るのは! 父さんに言ってやる」
「お前はアルバート家のか。それで私と戦うつもりなのか。馬鹿馬鹿しい。結果はわかりきってるだろう」
「そ、それは父さんが勝つに決まってる!!」
「なら埋葬グッズでも用意しとくんだな」
「!?」
「早くこの教室を去れ」
その受験生は泣きながら教室を出ていった。
本当にこの先生は恐ろしい。
何が恐ろしいかというとあんな怖い発言してるのにその最中に後ろ姿でもわかるくらいに笑顔なところだ。
てか埋葬グッズってなんだよ。
「不正はしないように」
そう一言、先生は言うと前に行き椅子に座り込んだ。
そして試験開始から30分が経過した。
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