23_プロポーズされた夜
「裁判、どうだった?」
屋敷に帰るとシンが心配そうな顔であたしたちを出迎えた。
「すべてうまくいったわ。ケイソンたちは島流しになった。
彼らが過去に売り飛ばした女性たちも救ってあげることができる」
「すごいな、ナナはやっぱりすごい」
シンが笑顔になってあたしを抱きしめた。
「ぜんぶシンのおかげだよ?」
「今日はみんなでパーティを開こう。ラルゴも呼んで」
「やったー!」
リジーとメイもバンザイをして喜んでいる。
みんなでお酒を飲んで、美味しい料理を食べた。
「ナナさん、あたしお城で証言してほんとによかった。
ケイソンとサーシャの悔しそうな顔を見て、スッキリしました」
リジーが言う。
「あたしもです。証言しなかったらきっと一生、胸の中がモヤモヤしていたはず」
メイも嬉しそうにそう言った。
あたしはこの異世界に来てよかったと、このとき心の底から思った。
ラルゴもリジーもメイもカイも、あたしの大切な友人だ。
そしてなによりも大切な人がここにはいる。
シンと目が合った。
彼は、あたしに笑いかけると、ゆっくりと近づいてきた。
耳元で、「あとでナナの部屋に行く」
小さな声でそう言ったのだった。
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パーティが終わった。
ラルゴは家に帰り、リジーやメイ、カイも自分の部屋に戻っていった。
あたしも自分の部屋に戻る。
そして着替えた。
コンコン!
ドアをノックする音が聞こえる。
「ナナ。入っていい?」
シンの声だ。
どうしよう。
シンは気に入ってくれるかな。
彼は、こんなの「はしたない」って思うかも。
心臓がドキドキと高鳴る。
あたしはぎゅっと目をつぶった。
「うん......。どうぞ」
あたしは、洋品店でシンが「これも着て欲しい」と言った、胸の大きく開いたスケスケの下着を身に着けていた。
ほかにはなにも着ていなかった。
「シン......その」
シンはあたしの姿を見ると、目を見開いて固まっていた。
「あっ......。ごめんなさい。やっぱり、着替えたりするんじゃなかった。やめれば良かった」
あたしは頬が熱くなるのを感じた。
シンは真顔であたしを見つめていた。
こんな格好して、男を誘っているあたしをみて、シンは呆れてるんだわ。
急に恥ずかしくなって、自分の手で胸元をかくす。
「反則だ......」
シンはようやく口を開いた。
そして早足であたしに近づいてくると、あたしを強く抱きしめた。
「ナナ。可愛すぎるって」
「可愛い?ほんと?」
あたしはシンを見上げた。
「可愛い。可愛すぎる。
そんな姿見せられたら俺は......ナナが泣いても、もう止められないよ」
そういうと、あたしの頬に首筋に激しくキスし始めた。
「泣いたりしないよ」
シンの背中に手を回して、あたしも彼をぎゅっと抱きしめた。
しばらく抱き合ったあと、彼は急にあたしの足元にひざまずいた。
「ナナ。イーサン・ネオロードの前で言ったこと、あれは罪を逃れるために言ったわけじゃない。俺は本気だ」
シンは、ひざまずいた姿勢で、あたしの顔を見上げていた。
「シン......?」
「ナナ。俺と結婚してほしい。幸せにする」
「シン!」
あたしはひざまずいている彼の首に飛びついた。
シンとあたしの目が合う。
彼は少し恥ずかしそうに笑った。
「ナナ、返事を聞かせてほしい。
君が結婚してくれないと、俺はまたネオロード城の牢獄に逆戻りだよ?」
「あたしは、自分がシンの婚約者だとイーサンの前で言ったわ。
シンを救うためだけに言ったんじゃない。
あたしもシンと結婚したいと思ってる......。あたしもシンを幸せにするよ!」
シンはホッとした顔をしたあと、嬉しそうに笑った。
「俺はもうかなり幸せだけどな」
彼はあたしを抱き上げるとベッドの上にそっとおろした。
シンがあたしの上に覆いかぶさる。
指と指をからめて、手をぎゅっと握り合った。
あたしたちはゆっくりと口づけを交わした。
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