41章 惑星ドーントレスの危機 12

 惑星ドーントレス最大の大陸。


 その北部森林地帯に開いた巨大な穴は、やはりダンジョンであった。


 入り口付近に溜まっていたモンスターを宇宙戦艦『ウロボロス』『ヴリトラ』の艦砲射撃で全滅させた俺たちは、全員で隊列を組んでその巨大な穴へと入って行った。


 大穴ダンジョンは、緩やかな下り坂になって地下へと潜っていっている。その規模は「大自然の神秘」などと言いたくなるほどの壮大さだが、ダンジョンだと思うとありがたみは薄い。


 調査隊の隊列の先頭はもちろん俺や青奥寺たちの一団だ。その後ろをメンタードレーダ議長プラス兵士30人に歩いてもらい、さらにその左右を守るようにアンドロイド兵100体が並んで護衛をする。


 しばらく坂を下っていくと、斜度が次第に浅くなってくる。すでにダンジョンの通路――というより巨大トンネルと言った方がしっくりくるが――へと入って500メートルくらいになる。


 入口は直径300メートルくらいあったが、さすがに通路は多少狭くなっている。それでも天井は恐ろしく高く、リストバンドのセンサーで測ると高さ150メートルくらいあるらしい。ほぼ円形の通路なので、幅も一番広いところは同じくらいあるようだ。


 地面を含む壁面は、土から岩に近いものに変化している。天井付近には光る岩が多く並んでいて、歩くのに支障がない部分もいかにもダンジョンらしい。


 真剣な顔で周囲を見回しながら、青奥寺が横にやってきた。


「先生、信じられないくらい広い通路ですね」


「こんなのは俺も見たことがないな。銀河連邦の技術なら作れそうだが」


「たしかに。璃々緒、どうなの?」


 呼ばれて、ヘルメットなしアームドスーツ姿の新良がやってくる。


「作れなくはないと思う。ただここまで広い通路を作る意味はないから、作ったという話は聞いたことがない」


「確かにそうか。こんな広い通路なんて作っても仕方ないよね」


「逆に言うと、このダンジョンの大きさに意味があるなら、やはり巨大モンスターの通り道になるということかもしれない」


「先生、その可能性はありますか?」


「Aランク、『特Ⅱ型』レベルでも余裕で通れる穴だし、通り道にはなるだろうな。いや、なるほど、ダンジョンの意味、ね……」


 青奥寺と新良のやり取りには面白い考え方が含まれていた。


 ダンジョンそのものの大きさや構造に、なんて考えたこともなかった。俺にとってダンジョンはすでにあるものであり、だとすでに固まってしまっていた。


 だがたしかに、これだけ巨大なダンジョンがなんの意味もなく開いたとは思えない。


 ならその理由は――と考え事をしていると、青奥寺が怪訝そうな顔で見上げてきた。


「先生、どうかしましたか?」


「いや、さっきの2人の話を聞いて面白いと思ってな。このダンジョンの大きさに意味があるなら、一体どういう意味があるんだろうかと思ったんだ」


「それは、やっぱり『特Ⅱ型』のような巨大モンスターの通り道ってことですかっ?」


 耳聡い双党が話に入ってくる。


 なぜか嬉しそうなのだが、どうせ俺が全部やっつけるから平気とか思ってるんだろうなあ。


「それも考えた。でもそれにしては大きすぎるんだよな……」


 と、そこで頭にチラつくのは『ウロボロス』での会話だった。


 そういえば「宇宙戦艦すら通れるくらいの穴だ」という話が出ていた……と、そこで前方からモンスターの叫び声が聞こえてきた。


「どうやらお客さんが来たみたいだな。全員戦闘準備してくれ」


 俺の指示により、青奥寺たちが前に並ぶ。アンドロイド兵も広がって両翼を固め、メンタードレーダ議長たちは後方待機である。


 前方から地響きのような足音と共に、モンスターの大群が走ってくる。ゴブリンやオーク、ヘルハウンドなどの低ランクモンスターがほとんどだが、アースドラゴンやベヒーモス、キマイラやグレーターデーモンなどのCランク、Dランクの厄介な奴らも混じっている。


 前面に見えるだけで数百体、その奥に続いているのを見れば恐らく1万以上はいるだろうモンスター。それを前にしても青奥寺たちは表情をほとんど変えない。むしろ絢斗などは口元が笑っているくらいである。


「よし撃て」


 モンスターたちが200メートルほどに迫ったタイミングで指示をする。


 双党やレア、新良が魔導銃を一斉に連射する。もちろんアンドロイド兵たちも同様だ。

100丁以上の魔導銃から放たれる『光の矢ライトアロー』は、低ランクモンスターを数体まとめて貫いて消滅させる。


 射撃戦では本来出番がなさそうな青奥寺や雨乃嬢、絢斗も、火の玉魔法『ファイアボール』や岩弾魔法『ロックボルト』を放って参加している。その威力はなかなかに高く、下手な魔導師より上である。


 上位ランクのモンスターに対しては、双党とレアが特製魔導銃から太めの光線魔法『ジャッジメントレイ』を撃ち出して対応する。アンドロイド兵の中にも10体ほど『五八式魔導銃』持ちがいて、同様に上位モンスターを狙撃している。


 しかしそれでもさすがに1万を超えるモンスターの大群を押し込むには不十分で、じわじわとモンスターの群れはこちらに迫ってくる。


「やはり我の力が必要か」


 そこでルカラスが前に出て、上半身を反らしたかと思うと口を開き、青白いブレスを吐き出した。


 それはブレスというより太い光線みたいな感じであり、ルカラスが右から左に一薙ぎすると、それだけで千体以上のモンスターが一瞬で消滅していった。


『ミスターアイバ、彼女はいったいどのような存在なのでしょうか? 私から見ても極めて高位の生命体だと感じられるのですが』


 後ろで見ていたメンタードレーダ議長が、そんな念話を飛ばしてくる。


『あれはルカラスと言って、異世界で数千年生きている古代竜という生き物が、地球人の姿に化けているんですよ。向こうの世界だと神に近い扱いを受けているやつですね』


『後で是非彼女とお話をする機会を設けてください、ミスターアイバ』


『ええ、構いませんよ。ルカラスも議長に興味があると思いますし』


『ありがとうございます。しかしミスターアイバがそのような存在の協力を得ているというのも信じられないお話ですね』


 議長は白い靄を激しくゆらゆらとゆらしているので、ルカラスへの興味は相当に強そうだ。議長は俺に感じ取れないことまで感じ取れるみたいだから、ルカラスみたいな存在には目がないだろうな。


 そんなことを話している間に、モンスターの大群はいつの間にかあと100体くらいにまで減っていた。ルカラスがいるとはいえ凄まじい殲滅力である。


 正面付近のモンスターには青奥寺と雨乃嬢、絢斗が突貫していき、ばらけているモンスターはアンドロイド兵たちによる狙撃で倒される。程なくしてモンスターの波は完全に消滅した。床に散らばる魔石や素材は、アンドロイド兵に回収させて『空間魔法』に放り込ませる。


 小休止の後、俺たちは再び歩き始めた。


 超巨大ダンジョンはわずかな傾斜でずっと下っていっているが、分岐や曲がり道などは一切なく、デカいトンネルがひたすら一直線に進んでいるだけである。


 一時間ほど進んでいくと再びモンスターの大群が現れるが、1度目と同じように殲滅する。


 さらに1時間歩いていくと、今度は強烈な気配が前方から迫ってくるのが感じられた。


「ハシルよ、これはAランクが複数いるようだぞ」


 ルカラスの言う通りAランク、すなわち『特Ⅱ型』相当の巨大怪獣クラスのモンスターが出てくるようだ。




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次回は所用により休載いたします。

次の更新は12月25日になります。

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