日曜日に市場へ出かけ~

 全裸~脱糞~決めてきた~


 ……


 あの日すぐ官警に取り押さえられ、このムショにぶち込まれてから既に……10年ほど経ってからは数えるのを辞めた……。


 あの日の俺の行動は、一体何をしたかったのか……若き日の過ち・気の迷いなのか、それともしっかりと信念に基づいた行動だったのか……。

 還暦をとうに過ぎ、すっかり白髪になった頭を摩りながら、毎日代わり映えもしない固く冷え切った臭い飯にありつく……刑務所の飯は美味いとか言っていた記事もあったがどうして、俺の入ったムショの飯は旧態依然の冷や飯だ。

 型で押し付けられた石の様な飯を薄い麦茶のような液体で崩して、雑炊の様に啜る……こんな飯でもほぼ楽しみのないムショの中では唯一の娯楽だ。


 今日も誰が使うのか判らない折り畳みの椅子を作る作業が始まる……2日前まで俺の斜め前で作業していた爺さんの姿が見えない……噂ではやっと「順番」が来たらしい……。

 最初は恐怖でしかなかったが、今ではその爺さんが心底羨ましい……この代わり映えのしない単純な地獄を抜けれるのであれば、早く俺も執行して欲しい……。


 外は幾つの季節が過ぎ、もしかして蝉なども鳴いているのだろうか……工場の機械音にかき消され、鉄格子のはめられた曇り硝子越しでしか外の様子を伺い知る事は出来ない……。

 外に憧れるのは、もう既に諦めた……此処から出る時は、物言わぬ屍と化しているだろう……。


 ただ一つ心残りは、俺の使っていたPC内データだ……数千点、いやもしかして数万点にも及ぶ年端も行かぬ少女たちの痴態が納められたデータは、押収された後処分されたのであろうか?


 嗚呼神よ、もし存在しているのならば、死ぬ前に何卒、なにとぞデータの処分を……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る