真・最終部 シンデレラボーイは、この『爆乳わん娘』を幸せにする義務がある!
第1話 童帝の俺が爆乳わん娘を嫁にしたんだが、どう愛でればいい?
世界を旅してきた風が、優しく肌を撫でるようにサラサラと通り過ぎていく。
俺がこの森実高校に入学し、3度目の桜が、その姿を現そうとしている3月上旬。
生まれ育ったこの地を離れる者。
卒業し、愛しき友に分かれを告げる者。
社会の荒波に
みながそれぞれ、物語の終わりに涙を流していた。
だが、悲しむ必要はない。
『終わり』とは、新たなる旅立ちに他ならないのだから。
ふと窓の外に視線を流すと、どこまでも広がる無限の空が続いていた。
そこには無数の『未来』が広がっていて、人々は『可能性』という名の船で、その大海原を漕いでいくのだ。
サァッ! と開けっ放しの窓から、春の訪れを予感させる心地よいその風が鼻腔をくすぐった。
新たなる旅立ちに相応しい、素晴らしい日だ。
そんな素晴らしい日に
「おい、シロウ? テメェ、もしかしてガチホモなのか?」
――出航と同時に、
「台無しだぜ、マーマ……」
ガックリと肩を落としながら、俺は頭を抱えた。
場所は我が実家、大神家のリビングにて。
制服に着替え、簡単な朝食をいただこうとリビングに寄ったのが、後悔の始まり。
なんで俺は、こんな爽やかな早朝から、実の母親に【ガチホモ】認定されにゃならんのだ?
これも試練か?
「あのさ、母ちゃん? 普通、朝起きてきた息子への第一声はさ? 『おはよう』とか『昨日はよく眠れたか?』とか、そういう温かいモノじゃないの? なんで俺は目を覚ますなり、実母に【ガチホモ】認定されてるのん? 嫌がらせなのん? 息子を精神的に痛めて楽しいの、ママン?」
俺がママンに湿った視線を送ると、何故か逆に責めるような視線が、ママンから返って来た。
えっ?
なんでそんな目で見られなきゃいけないの?
「『なんで』だと? 自分の胸に聞いてみやがれ、ボケナス」
「朝から口が悪いなぁ、母ちゃん……」
とりあえず言われた通り、胸に手を当て聞いてみる。
おい、俺の胸っ!
なんか母ちゃんがブチ切れてるけど、何か知ってるか!?
……返事はない、ただの屍のようだ。
おぉっ、勇者よ!? 死んでしまうとは情けないっ!
……いや死んでねぇよ。
「分からないか? なら教えてやる。愚息テメェ、メイやヨウコ、他にも美少女に囲まれて生活して1年。どうしてあんな可愛い女の子達が近くに居ながら、彼女の『か』の字すら作る気配がねぇんだっ!? やっぱガチホモなのか、おまえ?」
「待って? 『やっぱ』ってどういう事? えっ? 俺もしかして、ずっと前から実の母親にゲイだって思われてたってこと?」
なにそれ?
イジメかな?
と俺が口を開くよりも早く、キッチンで牛乳をガブ飲みしていた
「プハァ! ちょっと待って、お母さん!? 意義あり!」
「んっ、なんだ千和? お母ちゃんに文句でもあるのか?」
「文句なんかない。ただ、これだけは言っておかないと、愚弟が可哀そうだから、言わせて?」
まるで俺の庇うように、母ちゃんに向かって鋭い視線を飛ばす姉ちゃん。
その麗しき姉弟愛に、深くにも涙腺がウルッ!? ときた。
姉ちゃん……なんやかんや言いつつも最期はいつも俺を庇ってくれるんだよな。
俺は姉弟の絆の強さを再確認しながら、姉ちゃんの言葉に耳を澄ませて、
「愚弟がガチホモぉ~? そんなの、ずっと前から分かりきっていたことじゃんっ! 愚弟はね、ノンケだって構わない、
「うん、異議を認めない♪」
『ナイスフォローあたし!』と思っているところ申し訳ないが、姉ちゃんよ?
はっ倒すぞ、クソ
いい笑顔でナニとんでもねぇこと言ってんだ、このファッキン・ビ●チはっ!?
いい加減、弟をガチホモだと勘違いするのは、やめていただきたい!
実母といい実姉といい、ナゼ神は俺に、こんな家族を寄越したのですか?
そんな俺、前世で悪い事をしましたか?
神様に恨み言を
「ハァ~。やっぱり愚息はガチホモだったかぁ」
「俺はホモじゃないっ!」
否定の言葉がジェットエンジンの如き勢いで、飛び出て行った。
「愚弟は男の子にしか興味ない、生粋の
「あるよ!? バリバリ興味あるよ! 俺、変態だよ!?」
我ながら狂った発言だと思うが、堪忍してほしい。
「でもテメェの部屋、今にもロケットが飛び出してきそうなバッキバキに割れた腹筋のガチムチの写真集で、いっぱいじゃねぇか?」
「アレは姉ちゃんが勝手に置いて帰って、持って帰らねぇだけだよ!」
「頑張ったわ」
礼はいらねぇ! とばかりに、親指を突き立てるマイシスター。
こらこら?
なんだ、その親指は?
へし折るぞ、クソアマ?
「ったく、そんなくだらねぇ事を言うために息子を呼んだのかよ……」
俺は椅子を鳴らしながら立ち上がると、母ちゃんと姉ちゃんに背を向けて、玄関へと歩き出した。
「おい、どこへ行く愚息?」
「学校。親の金で今日も元気に学校へ行って来ますよ」
「学校って、愚弟? いつもより出るのが早いじゃない?」
そう言って時計の時刻を確認する姉上。
リビングに備え付けられたデジタル丸時計は、朝の7時20分を
……こういう所は
俺は内心の動揺と悟られないように、さも当たり前のように、
「今日は朝から生徒会の仕事で、いつもより早いんだよ」
「ふぅ~ん。まぁ卒業シーズンだし、そんなモンか」
アッサリ納得してくれた姉君の単純さに感謝しつつ、俺は早足で家を飛び出した。
「ちょっと早いかな? まぁ遅れるよりはいいだろう」
俺は溢れ出る興奮と緊張の両方を抱え、待ち合わせ場所である近所の公園へと向かった。
流石は3月なだけあって、肌寒い。
ニュースだと数年に1度の大寒波とかで、桜の開花が遅れているとか言っていたが、なるほど。
確かに玉の縮み具合からして、今年1番の冷え込みだ。
「少し早めに出て、正解だったかな?」
なんせ万が一俺が遅れて、彼女をこの寒い中待たせるような事になれば、俺は自分の頬を往復ビンタしなければならなくなる。
いや、この寒い中、頬を真っ赤にしつつ待ってくれている彼女というのも、
そんな事を考えながら、俺は駆け足で待ち合わせ場所へと向かった。
まだ時間はたっぷりあるというのに、足が『早く! 早く!』と俺を急かす。
どこか浮ついた胸。
足が軽い。
そこにはきっと、まだ誰も居ないと分かっているのに、早く行きたくて心がウズウズ♪ している。
俺はなんとか無限に溢れ出るソレを制御しようと、無理やり
自分でも分かるほどハッキリと笑みが浮かぶ。
そのクセ、顔が強張っている。
俺は下手クソな操縦で身体を必死に動かしながら、待ち合わせ場所へ急ぐと……居た。
天気も良く、空気も澄んでいて、キラキラと輝く亜麻色の髪。
上等な映画のワンシーンのように、公園の入り口の前に――彼女は居た。
森実高校の女子制服に身を包み、真っ白なマフラーに鼻先を埋めながら、フワフワの手袋の中でカイロを弄びつつ、お空を見ていた。
「……? ……ッ!」
彼女はまるで俺が来たことが『信じられない!?』と言わんばかりに、驚いた表情を浮かべた。
そしてすぐに、どこか恥ずかしそうな、はにかむような笑顔を向けてくれた。
「お、おはよう、ししょーっ!」
そう言って笑う俺の恋人――古羊洋子は、世界で1番カワイイと思った。
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