第17話 ドキッ♪ 男だらけナンパ大会!
30数人の男たちを引きつれて、決戦の場へと移動する俺たち。
それはさながら戦場へ向かう若武者が如く、徒党を組んで突き進んでいく。
肩を怒らせ、大股でズンズンッ! と町中を
もう俺たちの目には『勝利!』の2文字しか映っていなかった。
約束された勝利へ向けて、1歩、また1歩と歩を進める。
そして5分ほど余裕を残し、駅前の銅像へと舞い戻って……って、おっ?
「おい、見ろよ大神。小鳥遊の野郎、もう銅像前に戻って来てるぜ」
アマゾンが口を開き、さらに邪悪に瞳を吊り上げた。
「あのノホホンとした顔……間違いねぇ! ありゃナンパに失敗したと見た! 今こそ好機だぜ、大神!」
「よしっ! 全軍突撃ぃぃぃぃぃぃっ!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」」
俺たちは勝利の笑みを顔に張りつけながら、大我さんの居る銅像前へと駆け足で移動し――顔を凍らせた。
いや、なんかね?
めっっっっっちゃ居るのね、女の子が。
大我さんの周りに。
もう人口密度おかしいだろ? って言うぐらい、女の子がいっっっっぱい居るのよね。
30人なんて屁でもない。
軽く100人は居るんじゃないか? ってくらい、女の子がいっぱいなんだよね。
えっ、何コレ?
どういう状況?
「ば、バカなッ!? お、おっぱいがいっぱいだと!?」
驚きに満ちた声音で、トチ狂ったことを口にするアマゾン。
その少し離れたところで、芽衣たちも「こ、これは……」と驚きに目を見開いていた。
大我さんがアマゾンの声に気づいたのか、「うん?」と俺たち方へと顏を向けると、「……あぁっ、やっときたか」と呟きながら、こちらに向かって歩いて来た。
それと同時に100人の女の子が、
お、女の子が、女の子が迫ってくる!?
まるで企画モノの大人のDVDのような光景に、目を奪われる俺たち。
途端にムワッ❤ と、立ちのぼるような女の子の良い匂いが、俺たちの鼻腔をこれでもかと蹂躙し、俺の背後に控えていた野郎共が、思わず声をあげ始めた。
「な、なんだ!? このフローラルでイイ匂いは!?」
「し、しかも見ろ! 全員可愛いぞ!」
「た、大変だ! アマゾンが鼻血を吹いて倒れた!」
「だ、大丈夫かアマゾン!? い、息をしていない……っ!? お、女の子に免疫が無い者は下がれ!」
「だ、ダメです! 全員アソコがはち切れんばかりグレイトしてしまって、1歩も動けません!」
お股を押さえ前かがみになる者、鼻血を吹き出す者、パッツパツ♪ に張ったアレの痛みでうめき声をあげる者と、一瞬に駅前が阿鼻叫喚へとシフトチェンジする。
い、イカンッ!?
いまだ女というモノを母親しか知らないサクランボーイたちには、100人の女性たちから放たれるフローラルなイイ匂い❤ は刺激が強すぎたらしく、気がつくと全員、鮮血に染まりながら、笑顔で膝から崩れ落ちていた。
「くぅっ!? こっちがサクランボーイである事をいいことに、こんな悪逆非道な手に打って出るとは……卑怯なり小鳥遊大我! そんなにしてまで勝利が欲しいか!?」
「……何言ってんだ、お前? つぅか、なんで全員前かがみなワケ?」
JC、JK,OLに女子大生と、実にバラエティに富んだ女性たちを引きつれた大我さんが「意味が分からん」とばかりに首を傾げ――いや待て!
その前に確認しなければならないコトが1つある!
「あの……大我さん? 一応確認なんですが、その後ろの麗しい女性の方々は?」
「……なんで敬語なんだよ? 『後ろの女性の方々』って、お前がナンパして来いって言ったんだろうが」
さも当然のようにそう口にする大我さんに、思わず目を剥いてしまう。
ば、バカな!?
俺たちが銅像前へ到着したのが25分だぞ!
ヤツはそれよりも前にココに居た……。
それはつまり、あの男、20分以内に100人の女性たちに声をかけ、しかも
そ、そんなコトが可能なのは、もはや神々の領域に足を踏み入れている秋田が生んだ伝説のヒーロー、加藤さん家の鷹さんくらいなモノだぞ!?
「どうやら、この勝負は小鳥遊くんの勝ちのようですね」
大我さんの背後から、ぬるっ! と顔を出した村田委員長が、得意げにそう口にする。
その瞳は俺の背後で股間をパンパンッ! にして地面に
村田委員長は一瞬だけ「汚らわしい……」と、ドM大歓喜の瞳で顏を歪めるが、すぐさま『いつも』通りの仏頂面に戻り、
「どうやら何か小細工をしてきたようですが、無駄ですよクソムシ。彼とアナタじゃ、人間として、何より男性としての器が違います」
くぅっ!?
反論出来ねぇ!
今度は俺が顔をしかめる番だった。
確かに、向こうは美女100人、対してコチラはイカ臭い男32人である。
その32人全員が、お股のダイナマイトを爆発させ、駅前を鮮血に染めながら、景観を全力で破壊している始末だ。
もうちょっとしたテロリズムである。
そんな世界中の誰よりもテロリストなアマゾンたちを眺めながら、大我さんがポリポリと頭をかきむしり、
「……あぁ~、すまん。また俺、何かやっちゃったか?」
「「「「「――ッ!?」」」」」
瞬間、俺たちの体に稲妻が駆け巡った!
そ、その台詞!?
その
そして何より、何故か異様に女の子にモテる、その特殊体質っ!?
……ま、まさか奴が『そう』だとでも言うのか?
俺の脳裏に浮かんだ言葉を肯定するかのように、息も絶え絶えのアマゾンが「気をつけろ、大神……」と、震える唇を必死に動かして、世界の真実を口にした。
「や、ヤツは……小鳥遊大我は――『スーパーイキリ陰キャ』だ!」
「なんっ、だと? そ、そんな……あの伝説の!? げ、現実に存在したのか!?」
「ね、ねぇ、ししょー? 話の腰を折るようで悪いんだけどね? その……『スーパーイキリ陰キャ』って、ナニ?」
俺たちの会話を黙って聞いてくれていたマイ☆エンジェルが、
その横では芽衣と大和田ちゃんも気になっているのか、俺の方に顔を向けて小首を捻っていた。
そんな彼女たちを前に、俺は別の意味で震え上がってしまう。
「お、おまえら『スーパーイキリ隠キャ』を知らないのか!? 義務教育で一体ナニを勉強してきたんだ!?」
「逆に士狼は義務教育で一体ナニを勉強していたんですか?」
「シロパイは義務教育をなんだと思ってるし……?」
何故か芽衣と大和田ちゃんに白い目で見られる。
何でそんな目で俺を見て……あぁそうか。
きっと彼女たちは、幼少の頃に何らかの事情によって、まともな教育を受けさせて貰えなかったに違いない。
芽衣は中学卒業まで引きこもっていたし、大和田ちゃんはあのクソ親父の元で育ったんだ、そりゃ一部常識が欠けていても仕方がないというもの。
しょうがない。
ここは常識のあるダンディな俺が、そんな2人にも分かりやすいように『スーパーイキリ陰キャ』について教えてあげるとしよう!
「いいか3人とも? 『スーパーイキリ陰キャ』とはな、ボッチを名乗っておきながら、周りに女の子を
「憎しみが凄いですね」
「なにか『スーパーイキリ陰キャ』さんに恨みでもあるの、ししょー?」
スーパーイキリ陰キャ――それは何故か全員中肉中背で黒髪に、やたらハイスペックなクセに普段は力を隠している……ように見せかけて、ここぞとばかりに自分の能力を他人に見せつけマウントを取ってくる、全男子高校生の憧れの存在、それがスーパーイキリ陰キャなのだ。
ま、まさかこの目で拝める日が来るだなんて……。
へへっ、武者震いで身体が震えやがる!
「まずはこれで、コチラの1勝ですね。では時間も惜しいですし、さっさと第2回戦を始めましょうか。ちなみに、クソムシがどんな細工をしてこようとも、ことごとくを持って打ち砕いてあげますよ」
と、自分の手柄でも何でもないクセに『どやぁっ!』とドヤ顔で俺を見下してくる、村田委員長。
これも好意の裏返しだと思えば……ふふっ、悪くない❤
まったく、俺のことが大好きなクセに、そんなツンツンした態度を取っちゃって、もう可愛いなぁ!
「ど、どうするの、ししょーっ!? もう後がないよ!?」
「安心しろ、よこたん。ここまでのは軽い準備体操みたいなモノだ。本番はここからだぜ!」
「シロパイ、足がKO寸前のボクサーのように震えてるよ?」
「相変わらず体は正直ですね、士狼……」
まさかエロマンガでしか聞いたことがない台詞を芽衣の口から聞けるなんて、ちょっと興奮したのはナイショだ。
俺はほんのりふっくら♪ しているお股のジョイスティックを片手で隠しつつ、大我さんを睨みつけるように宣言してやった。
「イクぞ大我さん! 第2回戦は『
「……
「ルールは簡単! 今から10秒以内に仲間になってくれる
「こ、この男、絶対に勝てる勝負を仕掛けてきましたよ……」
「シロパイ……」
「ししょー……」
何故かドン引きしている生徒会女性陣を無視して、脇で待機していた元気から、用意していたサッカーボールを受け取る。
その背後で32人の選ばれし男たちが、大胆不敵な笑みを浮かべて、立ち上がる。
そうだ、何度倒され、恥をかこうが関係ない!
俺たちは本当の恥を知っている。
倒されることは恥じゃない……倒されても立ち上がらないのが恥なんだ!
さぁ行こう、みんな!
誇り高き童貞の意地、今こそあのヤリチンに見せてやろうぜ!
「それじゃ、よぉーい……スタートッ! ――俺とサッカーする人、この指とぉ~まれ♪」
「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」
まるで街灯に群がる羽虫のように、一瞬で32人の男たちが仲間になってくれた。
これも俺の人望が
「く、クソムシがぁ~っ!? ひ、卑怯ですよ!」
「卑怯? 何がだい村田委員長? 言ってる事がよく分からないなぁ? それに俺がどんな細工をしようとも、ことごとく打ち砕いてくれるんじゃなかったのかなぁ? んん~?」
「くっ!?」
苦虫でも噛み砕いたように顔を歪める、村田委員長。
そんな村田委員長の前で、これでもかと高笑いを浮かべるナイスガイ、俺。
「さぁ! 俺達のこの鋼の絆、砕けるモノなら砕いてみるがいい! ふぁーっはっはっはっはっ!」
「もう完全に悪役だし……」
大和田ちゃんが何か言っていたような気がするが、気にしない!
ふははははははははっ!
さぁ、どうする大我さん!?
俺が勝利を確信した笑みを大我さんに向けると、彼はポリポリと
「……んん~? じゃあ――」
と俺の背後にいる仲間たちに向かって、声を投げかけてきた。
「――おれの仲間になってくれたら、女、紹介してやるけど?」
気がつくと全員、王に忠誠を誓う騎士のように片膝をつき、大我さんに向かって
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