一話完結物語集
めいびー
銃口の先にいるのは
こら、しっかりしなさい
銃口がブレている
狙いが定まっていないと、当たるものも当たらないよ
標的に戦意は無く、武器も持っていない
やりやすい仕事だろう
…仕方が無い
――(自分が持つ銃に手が添えられる)
――(先ほどよりも、師匠との距離が近くなった)
ほら、これで撃ちやすくなっただろう?
…懐かしいな
君がまだ銃に慣れてない頃も、手を添えてやったっけ
ふふ…初めて会った時は驚いたよ
まさか、吹けば飛ぶような細く小さい身体をした子供が、国一番の殺し屋と呼ばれるこの私を割れたガラス瓶一本で恫喝してくるとは、想像もしなかった
粗末な装備で大人から略奪できると考えている君の頭の悪さとか、この国で自分のことを知らない奴がまだいたのかとか、まあ色々と見ていられなくなって…躾け直してやろうと拾ったわけだ
あと、後継者を探していた時期だったからね
孤児なら丁度良いと思ったんだ
そして私の身勝手な願いに応えるように、君は殺し屋としてのスキルを上げていった
群れたコソ泥共、辛うじて機能している自警団、格上の同業者達を相手にしても、それら全てを打ち砕き、無事生還している
「殺し合い」という分野で、君に敵う者はいないと言って良い
それでもまだ足りない
殺し屋として、武力を行使する者の上に立つ者として、やらなければならないことがある
それが「これ」だ
必要なことなんだよ
君は人間だ
他者と交流し、関係を深め、特別な縁が生まれることもあるだろう
だが、その情さえも打ち捨て、縁の先にいる相手を殺せるようにならなくては
そうでなくては、殺し屋の頂点に立てない
新たな一歩を踏み出せない
君が築く時代に過去の残り香は不要
だから殺す、それだけだ
――一つ聞かせて下さい
なんだい
――師匠は何故殺し屋になったのですか?
別にたいそうな理由じゃない
ただ…抑止力となる存在がいるのなら、戦場ではない場所で死んでしまう平凡な人間は減るだろうなと思っただけさ
…お喋りはここまでだ
さ、成長した君を見せてくれ
冥土の土産として、それくらいは望んでもいいだろう?
そのために、私は君の目の前に立っているのだから
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