nobody

福郎 犬猫

序章残り少ない退屈な時間

第1話 ただの偶然もしくは悪運

お前は幸運だ

そんなお前に恩恵を与えよう


神と名乗る男は上機嫌にそう言った

この男が本当に神であるかの確証はない

一つはっきりしていることは両親が死んで俺だけが生き残った


全てくずれてしまった瓦礫の上

瓦礫とともに思いや記憶まで崩れてしまったように俺には何も残らなかった

親の敵を取ることも、一人で生きることも何も出来ない

俺はただ呆然とその神とかいうものらしい男を見ていた

神の恩恵についての話を聞きながら別のことを考える



どうして二人は死ななければいけなかったのか

なぜ俺なんか庇って死んだんだ

そもそも何故二人は俺と居てくれたんだ

利用価値も才能もない俺に生きている意味はあるのか

俺にいったい何が出来るというのか


その答えはいつまでも見つかることはない

それでも逃げることだけはしなかった

それは俺が逃げていしまえば、二人がやってきたこと、これからやろうとしていたことが全て無駄になる気がしたからだ

それだけは避けなければいけない

少なくとも二人は俺なんかと違って、優しくて優秀で生きてさえいれば何か特別なことをを成し遂げたはずに違いないのだから


だからせめて







朝だよ



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る