絶望の英雄はかく語りき〜②ナンバリングの位置が変わった、俺と彼女の立ち位置も変わった
あれがバスケ部の吉田か…そして、その男と仲よさげに歩いていた…どころじゃないな。
俺と付き合いながら、バスケ部の男とキスしていた美春。目的が見えない。
今日は美春との夜会、最近は曇り顔で入ってきていたが、理由が分かった後見ると…凄い分かりやすいな…
何故かこの曇り顔だけは変な感じでドキドキする。
「久しぶり…どう?最近調子は?天気は雨っぽいね」
何かこちらの出方を見るような、サッカーゲームの実況の枕言葉みたいな事を喋る美春。
「おう、そうだな。調子は良いぞ!天気は曇り(顔)!」
無駄に明るい俺に違和感を感じたようだが俺もどうして良いか分からない。
正直、客観的に考えれば飽きたんならさっさと振れば良いだろうとも思うが、俺の心がそうではない。
先日の現場を見た日、…家に帰ったものの、何か気持ちのやり場に困り、何かあるかとネット見てたら浮気される主人公がメインの漫画や小説を見たんだ。
主人公が荒れるか、拗れるか、発狂していた。
なのに…何故だろう。俺は胸…心臓か、肺が苦しいだけ。
始めて繋いだ手のドキドキを奪われた、いや、俺の高校までの人生を吉田?に奪われた。
16年?全てを奪われたんだぞ?
本当は…多分もっと辛いんじゃないか?
もしかしたら、もっと感情を出せればモヤモヤを痛みに変える事が出来るのだろうか?
そんな事を考える余裕も出てきた時、俺は彼女のストーカーになる事にした。
多分、こんな経験も付き合っている間でないと出来ない。
付き合っていてもアウトな気がしたがそこまで頭は回らない。
悲しみ、喜びの涙というのは人間だけが出すらしい。
俺はまだ、涙を流していない。
もしも…ただフラれていれば…俺は理由のわからない感情というか、生き物になっていただろう。
次の日、学校が終わる。
放課後、編入の手続きのフリをして美春の学校に入る。バスケ部だっけか?
美春に会わないようにしないと…
しかし学生で良かった、でなければ大変な事に…まぁ良いや。
「最近さ、マネージャーの様子がおかしいんだよ」
うおぁ!?いきなり本丸に遭遇した!
吉田…なのか?この間の手を繋いでキスしてた奴がいきなりすれ違ったので声をあげそうになった。
俺は近くで帽子を深めに被り不審者丸出しで盗み聞く。
「お前、マネージャで付き合ってんだろ?ウチの部活は恋愛禁止になのに良くやるよな?」
「しょうないだろ?本当に好きだったんだよ…でもさ、たまにフッと暗い表情するんだよ」
そりゃそうだ、何故なら俺とも付き合っているからな…この学校じゃある意味公認なのか…
「何とか美春の悩みを解決してやりたいけどなぁ」
そりゃ俺の台詞だ…と、言っても俺の出番はもうないんだろうけどな…あの笑顔を見たら…俺のさせてやれないあの笑顔…
アァ…でも、分かったよ。俺は負けたんだ。
恋人をコイツにとられた、それで良いよ、もうそれで良い。確かにこれは吐きそう。
フラフラと学校の外に出て、公園のベンチに座る。
「どうやって別れようか…今更…なぁ」
美春が別れを渋っているとすれば…家が隣で親同士が仲良いからな。
こういう時、しがらみが拗れを生むのか…
姉の美琴さんも応援してくれてるし。
でもまぁそんな事より…って事は無いけど…何か美春の悩んでる顔見たり、浮気されてたって思うとムラムラゾクゾクするんだよなぁ…俺ってドMなのかドSなのか良く分からんなぁ。
感情の行き場にまたもや困っていると…美春らしき女が男と歩いていた…美春と吉田だったらヤバい!
俺は深く俯きながら目だけカップルの方に向けた。
アレ?男は中学時代のバスケ部だったイケメン、池端だ。
アイツこの辺の学校だっけか?横にいるのは彼女か?
俺は普通に顔を上げようとして…ある事に気付きすぐ下を向く…何故なら…
美春が池端と歩いているからだ…なんでぇっ!?
と、ついつい漫画みたいに心で叫んだ。
そうか、三股?昆虫は六本足があるらしいが、美春は、昆虫だったんだな。
めでたしめでたし…ではないな。
とりあえず俺はストーカーだ、だったらついて行っても問題あるまい。まぁ問題だらけだが…
「今日も親が遅いからよ、良いだろ?」「……」
親が遅いから良いらしい、いや何が良いのか分かっているが止められない。
そして池端の家、マンションだがオートロックではない…そして一階…余裕でベランダに行ける…
正直、この柵を乗り越えたら俺はマジで犯罪者…
柵というのは敵から身を守るため、ルールを厳守する為…乗り越えたら…それは違法で悪だ…
いや、先にどちらが柵を越えてきた!?
こいつ等だろ?だったら俺だって越えてやるよ!
…そもそも美春が柵を設置していなかった場合は?と、頭によぎったが考えるのをやめる。
今、マンションに入り部屋まで確認、その部屋のベランダに侵入し聞き耳を…
『アッ♥アッ♥』『…前は声を出さなかったのになぁ?』
いきなり過ぎる…スピーディー展開過ぎてビビった。
家に入って2〜3分で致すとは如何なものか?
とにかく俺は…窓の隙間からスマホを部屋に挿し入れて撮影した。
こりゃあ…犯罪だ。もう完全に犯罪。
俺のは完全な犯罪、敢えて言い訳すれば
【偶然間違えてベランダに入って偶然スマホを窓の所に差し込んだら何故かカメラが起動した…】
と、馬鹿な事を考えていたら一発終わったようだ。
しっかり録画した、俺が初めてと思っていた相手の痴態。シュルシュルと制服を着る音が聞こえる。
美春が何か言った。
「これで良いでしょ?誰にも絶対言わないでよね…」
「分かってるよ…其の為にエロい事してんだからな…でも…お前も声出してんじゃん、案外楽しんでねぇか?」
「は?そんな訳無いし…」
「しかしなぁ…振られた時、てっきり▲●■と付き合うかと思ったけどお前も大概だな?」
「………そんな訳無いし…じゃ、帰る」「おう」
バタン
そんな訳無い…か…しかし池端…お前が真の悪役だとは…いや、美春もか?
とにかく俺は…明確な敵を手に入れた。
俺はここから、池端に復讐すべく…
「ハァ、最近めんどくさくなってきたな…アイツが▲●■と付き合ってたらこんな事しなかったんだけどなぁ」
はぁ!?どういう事だよ!?
池端は知らんのか?俺と美春が付き合ってる事…
ますます分からん…俺は思考を整理する…
ガラララララララ…
「一服しよ、そうだよなぁ。▲●■とは別に悪い印象無いし、同じ中学の奴で付き合ってる奴から寝盗るなんて俺の学生生活的に死…うおぁあああ…!?」
「うおあああ!?ホアアア!?!?」
ガシャガシャーン
池端がベランダにポップアップした!?
お互い奇声をあげる。池端はくわえタバコで尻もちをついた。
池端と一瞬目があった、と!同時に逃げ出そうとしたが足が絡み柵を超えられた無かった…
何故だ…こんな時だけ柵が…
チラッと見えた池端の顔…目が泳ぎまくり不安いっぱいだし、俺も多分同じだ…
『『なんでぇ!?』』
声が被った…
「まっ待ってくれよ!▲●■だろ?どうして…」
俺は腰をガクガクさせながら頭だけがフル回転している。どうして?どうしてって言われても…
いや…聞こう…何が何だか分からないが…
「池端…お前…俺から美春を寝取って何がしたいんだ?」
「違うよ!お前と美春は付き合ってないだろ!?お前、頭かヤバいんじゃねーか!?何だったら一緒に病院行ってやろうか!?」
だったら証拠を見してやる。
「ほら!このライヌのやり取り見ろよ、明日はデートとか、好きだよって言ってるだろ?」
「うわあマジかよぉ…とりあえずベランダでこの話題は…ちょっとまぁ中入れよ…」
俺は促されて間男の懐に飛び込んだ…
「ほら、コーヒー。確か飲めんだろ?しかしなぁ…全部見てたの?」
コクリ
「キツいなぁ…井岡に何て言おう…とっとと終わりにしとけば良かったぁ…分かんねぇけど▲●■に謝れば良いのか?一応、ゴメンな?」
コイツ…全く悪気がない。いや、俺と付き合ってるの知らなければ当然か…
この男、池端…今出た井岡という男は、俺の部活を通じた友人であり池端の幼馴染みでもある。
バスケ部とサッカー部、接点はないが特に揉めてもいなかった。
いや、一回ぐらいカラオケか何かに行ったな。
当時、池端がフラレた…と聞いたのは井岡からである。
俺の中学は学校におけるカーストは存在せず、上下関係は無い。男子は仲が良かった方だ。
そもそも女たらし池端と言われてもちゃんと告白する辺りまともな人間だと思う。
「言い訳じゃないけどさ、美春が男と腕組んで歩いているし、別れ際にチューしてるからお前かと思ったら中学の同級じゃないし?…何だよ、誰とも付き合ってないじゃん、だったら別に口説いても良いじゃんって声かけたらコレだよ…」
チュー…
「いや、何て声かけたんだよ…普通、そんな関係になんないだろ?」
「いや、普通に…『あれ、美春じゃん。さっき男腕組んでチューしたけど▲●■じゃねーじゃん、何やってんだよ?俺にもさせろよ(笑)』って…」
「なんで『させろよ』何だよ?」
「いや、中学の時好きだったしチューしたいじゃん
?そしたらなし崩し的に…しかも吉田に言うなって言うから…俺はどうすれば良いんだ?」
捨てられた仔犬のような目で俺を見る池端…いや、それ俺がやる奴だから…俺は顔が曇った。
「もう…どっちでも良いや…俺は…もう良いや、どうでも…あ、でも俺が知った事は内緒で頼むわ」
池端がギョッとした顔で俺を見る、なんで?
「え?あ、いやいやいや、それが一番キツイだろ?何で?俺、ずっと曇った顔のまま美春の浮気相手やんの?友達が知ってるのに?井岡に顔向け出来ねぇよ…」
「お前はそれが罰なんだろう…俺も顔向けできねぇし…じゃあな…」
俺は池端の家から出た。
何故赦したのか?
何故怒りが沸かなかったのか?
それは俺が池端の家に普通に不法侵入して盗撮したからだ。正直、気が気じゃなかった。
さっさと会話を終わらせたかった。
話してる感じ、池端もさして考えがあるわけじゃ無し。
井岡は春休みに教えたら祝福してくれたから…会いたくねぇし…
それに不法侵入の事や盗撮の事を言われたら俺が弱みを握られて間男になる確率は…無いだろうけど、とにかく関わりたくない。
だか、それでも夜会はやってくる…
「こんばんわ…ねぇ…今度さ、デートしようよ…」
「うーん、バイトが忙しいからなぁ…」
何で美春の顔が曇ってんだよ、俺が曇りたいわ。
美春が帰った後、俺は…この後どうすれば良いか考える。何も思いつかない…
でも、何か美春が追い詰められて、顔が曇るとムラムラする。
そして美春と池端の動画をイヤホンを付けて見る。
ギンギンになる…俺…終わってねぇか?
ヤバいな…これは誰のせいでもない。性癖の問題だ、誰も悪くない。
だとすると…
【浮気してた事を皆にバラす】
違うな
【別れて新しい彼女を作って悔しがらせる】
違うな
【美春に真実を突きつけてまだ気持ちがあるならやりなおす】
違うな…うーん…
【夜会の日にクリスマスプレゼントを用意して泣きながら動画で自家発電してる所に美春登場】
ん?コレだな…しっくり来た。何にも解決しないが凄い興奮しそうだ…正直、想像しただけで…この際、美春とか家族の事とかどうでも良い、刹那的な考えで言えば…コレしか無い!
―――――――――――――――――――――――
※ハヒル目線
「という、事があったんだ。だから邪魔しないでくれないか?ハヒル…」
と?言う事?何が?
先ほどコキュートスという魔導器により私は棺桶型の入れ物閉じ込められたまま、森で尋問を受けている。
多分、イブキ様は私を運んだまま逃げ切ったんだろう…
「全然意味が分かりませんが?邪魔って!後もう少しで私がイブキ様を殺す所だったんですよ!?理由になってませんよ!?そんなクソ女!さっさと忘れて下さい!肥溜めリリーと一緒に便器でGO!!ですよ!私だけを信じれば良いんです!私だけを!良いんです!」
感情のままに喋ると…はぁ…と面倒くさそうに溜息を出すイブキ様…どういうつもりだ!?何を考えでいらっしゃる!?
「じゃあさ、…うーーん…もし…美春の生まれ変わりが…ハヒルだったとしたら?」
なん、だ…と…
※別視点でちゃんと説明が入ります。
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