最後の言葉は君への|呪い≪愛≫の言葉
五十も年が違う年の差婚だったので、別れの日が早く来る事は明白だったのだが。
いざその刻が来ると、やはり、ああ、自然体で別れようと思っていたのに。
格好をつけたいと、年上として、また、伴侶として、なけなしの威厳が湧き出る。
出会った当初は少しだけ残っていた黒髪もすべてが白髪になってしまった自分の、かろうじて禿は免れた頭を撫でる君に、さあ、言ってやろうと思った。
最後の言葉を。
君への|呪い≪愛≫の言葉を。
来世にまで持ち越せるように刻んでやろうと。
意気込んでいたのに。
先を越されてしまった。
待っていなくていい。
心臓が飛び出すくらい全速力で駆け走っていていい。
軽く走って追いつくから、追い越すから。
だから。
楽しみにしていてね。
君は笑った。
とても、死に際の伴侶に見せる笑顔ではなかった。
ああ。
もう。
悔しいなあ。
とっても。
嬉しいなあ。
とても。
絶対来世も君と出逢いたいって。
切に願ってしまう。
最後の言葉は君への|呪い≪愛≫の言葉だよって。
笑う君を引き寄せて、米神に口づけ、囁いて、笑って、自分はこの世から一時的にさようならをした。
ああ、楽しみにしているよ。
またね。
(2023.10.17)
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