秘めた一撃

 『ぐぅぅぅぅ・・・ハァハァ・・グハァッ!!』


フォカロルは勇の一撃をボディに喰らい

お腹を押さえフラフラとし意識が朦朧としていた

そして片膝をついて跪く

しかし魔剣を杖代わりにして体を支え

耐えていた

勇が目の前にいるのを悟ると

横になぎ払い牽制してきた

勇はその一撃を交わしフォカロルを倒しきれなかったと

判断し一旦距離をとった

物理障壁がクッションとなったおかげで

フォカロルは勇の一撃に耐える事ができたのだった


 『フゥフゥ・・・ハァハァ

 くそっ・・・この、小娘がぁぁ!!』


フォカロルは怒りを抑えきれない

先ほどまでヘラヘラとニヤけて勇を見下していた

フォカロルはもういない

物理障壁に絶対の自信があったフォカロルは

まさか破られるとは思ってもいなかった

その自信がへし折られ焦りと怒りがおさまらず

冷静さをなくしている

勇への警戒心がマックスとなってしまった

勇にとっては先ほどまでのように

余裕な態度でいてくれた方が

良かったのかもしれない


フォカロルは未だ勇から受けた一撃のダメージが

抜け切らない

もう一撃もらえば立ち上がれないと判断し

慌てて破られた物理障壁を張り直した

とはいえ物理障壁を簡単にはといかないが

破る事が出来ると分かったいま

フォカロルは物理障壁に絶対の自信を

おけなくなっていた

先ほどまではわざと勇の一撃を受けて

反応を楽しんでいたが

その余裕はなくなった

馬鹿な事をして遊んでたせいで一撃もらってしまった

自身の油断に腹立たしくも思い

初めて戦闘体勢をとる


 『うがぁぁぁぁぁぁ!!!』


フォカロルが吠える

勇はじっとフォカロルを見る


 結構効いてるっぽい

 フラフラだし

 でもそのせいでもうあの壁を破る事が

 難しくなっちゃったなぁ〜

 もう壁を破壊するのを待っててくれないだろうし

 となると・・・

 やっぱ魔法だよね

 あいつは私が魔法を使う事を

 想定していない

 たぶんだけど大きなイカと戦った所を

 見ていないはず

 でも私の魔法は諸刃の剣・・・

 使用すれば私も痛い思いしちゃうし

 もし気を失ったりしちゃうと

 エリカがいない今は危ないよね

 魔法を・・・発動しない状態で

 手に貯めれないかな

 ボクシングのグローブのように

 イメージ、魔法はイメージ

 やんわりと魔法、魔力ってのを貯める

 それで拳を包むと

 魔法の拳ができあがる・・・はず

 あいつは今冷静じゃないとはいえ

 ばれたら対策を取られてしまう可能性がある

 それこそ魔法バリアみたいなの張られたら・・・

 チャンスは一度キリって事だよね


そんな事を考えていると

少し回復し始めたフォカロルが

剣を振り回し攻撃を仕掛けてきた

フォカロルから攻めてきたのは初めての事

それだけ追い詰められているという事だった

しかしダメージが残るフォカロルの攻撃は

ただ剣を力任せに振り回すだけだった

勇は右に左にすれすれで交わす

舐めていた相手に今は下に見られていると

思ったフォカロルは渾身の力を振り絞って

激しく剣を振りかざしてきた

勇は攻撃を大きくかわして距離をとる

そして先ほどと同じように

右拳を引いて同じ一撃を繰り出すように

見せかけた

フォカロルの意識を右手に集中させ

さっきのような一撃が来ると思わせた


ダッシュと共にフォカロルに向かって飛んでいく

さっきよりも早く右手を突き出し意識させる

その際左手を後ろに引いてフォカロルの視線から

遠く見えない位置に持っていき

ゆっくり魔力を貯めてみた

フォカロルの目の前で着地して

ドンっと床に足跡が残るくらい

しっかり踏み込む

物理障壁と勇の右手が激突する

さっきと同じように勇の右拳と物理障壁が激突する

しかしフォカロルはもう余裕な態度で見てはいない

物理障壁が破られる訳にはいかない

魔剣を両手で持ち上げ

勇の右手を切り落とそうと大きく振りかざす

勇はあっさりと右手を引いて後ろに軽くジャンプ

フォカロルの魔剣は空を切って地面に刺さる

勇は左手に魔力を貯めた

うまくいってるのかどうかは分からない

グローブのように魔法をまとった拳をイメージした

強く強くイメージする

左手が暖かくなったような気がした


 大丈夫!いける!!


勇は後方にジャンプした反動を使い

さらにフォカロルにむかって飛びかかる

左拳に力を込めて


フォカロルは勇があっさり退いた事と

更に飛びかかって来た姿を見て驚いた

勇の左拳はボヤんやりした魔力の球体におおわれ

その球体の中はバチバチと帯電していた

おそらく勇は無意識にサンダー

雷のイメージをしていたのだろう

クラーケンをやっつけた魔法が

サンダーだった事から強く意識に残っていた

フォカロルはその拳を見て

唖然として動きが止まってしまった


 そんな・・・

 あ・・・あれは魔法なのか?

 そんな事が出来るはずもな・・・


フォカロルがそう思った瞬間

勇の左拳は物理障壁をすり抜け

フォカロルの目の前にせまった

勇は全力でフォカロルの顔面に

魔力を帯びた拳を叩きつけた


 『いっっっけぇ〜〜〜〜!!!』


フォカロルの顔面を真にとらえ

そのまま振り切った

フォカロルは地面に叩きつけられ

そして反動で跳ね上がり

そしてまた叩きつけられと

数回繰り返して飛んでいき

館の壁にぶつかって止まった

魔法による攻撃と物理による攻撃は

2倍以上の威力となった

それをまともに受けたフォカロルは

意識を刈り取られ気絶した


 『やた、やった〜〜!!

 成功した〜〜〜〜』


勇は両手を上げてバンザイしたその時

館の扉がバンっと激しく開けられ

エリカが飛び込んできた


 『勇!!!』


とエリカは館に飛び込んだが

笑顔でバンザイしている勇を見て

ホッとする

勇も無事な姿のエリカを見て一安心して

満面の笑みでピースをする


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る