040:ジャングルでの合流

 ディオスダードに倒され気絶をしている青ワニの口から光る何かが転がり落ちた。その光をイチゴは瞳の端で捉えた。

 気になったイチゴは気絶している青ワニに恐る恐る近付き謎の光るものを確認した。


「ねぇ見てぇ。青い球ぁ!」

 イチゴは探し求めていた青い球を発見し声を荒げ興奮した状態だ。

 その青い球を拾おうと手を伸ばすがどうしても気絶している青ワニが気になってしまい怯えながら拾った。


 青い球を見たモリゾウは「やりましたよ! あの球と全く同じです!」とテンションを上げて喜んだ。

 そして合流し寸前の仲間に向かって大声を出す。


「キンちゃん、ノリちゃん。こっち側に来れますか? 会わせたい人と見せたいものがあります!」

「もうターザンは無理だぞー! ディオスダード俺たちを運べるかー?」

 キンタロウも大声で叫んだ。ターザンロープでは合流できないのは検証済みだ。なので今すぐ合流するにはディオスダードになんとかしてもらうしかない。それほどキンタロウたちがいる崖と地上は高さがあるのだった。


「承知ゾ」

 ディオスダードはキンタロウの言葉を聞き飛び上がった。助走もつけずにひとっ飛びでキンタロウたちがいる崖の上に着地。着地と同時にマッチョポーズでポーディング。ノリも同じポーズをとって歓迎している。


 キンタロウは「おー」と拍手しながら感動している。


「では、失礼しますゾ」

 ディオスダードはそのままキンタロウとノリの2人を抱えた。


「マジか。2人同時とか行けんのか! 1人ずつでいいんだぞぉお、うぉおおおい、話を最後まで聞けぇええ」

 キンタロウの話を聞かずにディオスダードは2人を抱えて飛んだ。


「ぁぁあああぁあぁぁ、うごッ!」

 叫びながら飛んで着地の反動を受けたキンタロウ。


 ディオスダードは2人を抱えながら綺麗に着地した。そしてマッチョポーズをとる。

 今度はイチゴとモリゾウが拍手をする。

 約1時間ぶりの合流となる。


「デ、ディオスダード。あ、ありがとうな」

「うぬ。またいつでもお呼びくださいゾ」

「おうッ」

 着地時にダメージを受けたキンタロウだが手のひらをディオスダードに向けた。そして『HOMEホーム』と唱えディオスダードは白い煙とともに消えていった。


 消えていくディオスダードに「ありがとうぅ」と可愛く手を振るイチゴ。


 ディオスダードが消えたのを確認しモリゾウは口を開いた。

「どこ行ってたんですか、2人とも。大丈夫でしたか? ってノリちゃんその傷どうしたんですか!」

 モリゾウはノリの大怪我に気が付いた。ノリの怪我は腰に大きな内出血の跡があり紫色に腫れている。ディオスダードに抱えられた時にタンクトップがめくれ上がってしまったのだ。この傷は緑ヘビとの戦いでできた怪我である。


「大丈夫だ」とマッチョポーズをとりアピールするが傷を見られてしまった以上、大丈夫なわけないのだ。

「無理しないでぇ。すごく腫れてるぅ」

 イチゴは心配そうにノリの傷を見ながら言った。


「とりあえずお互い無事って感じじゃないけど生きて合流できてよかった」

 キンタロウは合流することができた仲間たちの顔を見て安堵の表情で言った。そしてそのまま目線は横に立つモグラ人間へと向いた。


「モグラだよな。モグラ。ウサギじゃなくてモグラの案内人か?」

 キンタロウはまだダイチのことを知らない。なので案内兎のような役割の生き物だと思っているのだ。


「俺はソラとウミの兄のダイチだ!」

 ダイチはモグラモードを解除しながら挨拶をした。その姿を見るのはモリゾウとイチゴも初めてだ。

 髪色は次女のウミと同じ栗色だ。キンタロウよりも少し背が低い。そしてノリほどではないが筋肉質のがっちりとした体系だ。


「ウミちゃんの兄ちゃんか。見つかったんだな。よかった! というかモグラに変身できるんだなこれもスキルの効果だよな。すげーな!」

「あぁそうだ。俺のスキルはモグラに変身できるスキルだ。モグラの聴力と鋭い爪、それに地面にも潜れる!」

「マジか! すげーな!」

 ダイチのスキルの話を左右に飛び跳ねながら聞くキンタロウ。

 テンションが上がるのも無理はない。ボドゲ部の中でキンタロウだけスキルが判明していないのだ。なので自分のスキルも動物に変身できるものかもしれないとワクワクしているのだ。


「スキルについて聞きたいことがあると思いますが時間がありません。早く右耳へ向かい壁画の謎を解読しましょう。次のヒントが現れてるかもしれません」

 時間制限を気にしながら先を急ごうとするモリゾウ。

 それもそのはず。ダイチたち兄妹のチームの残り時間は30分を切っている。壁画の謎を解かない限りここまで協力してくれたダイチと一緒に最終ミッションの報酬をもらうことができないのだ。


「それもそうだな。その右耳の方に行こうぜ。壁画の謎ってのを俺も見てみたい」

 キンタロウはモリゾウの意見に従い先に行くことを決意。


「戦いの後で申し訳ないが、走って向かおう!」

 ダイチは再びモグラの姿に変身した。変身する姿は体がゆっくりとモグラ人間に変わっていく。そしてモグラ人間の姿になり地面に潜った。


「うぉお、変身スキルかっけーな」

 変身も地面に潜るところも感心するキンタロウ。


 そのままボドゲ部はモグラのダイチの後ろについて行く。次の目的地は謎の壁画と宝箱がある『右耳』だ。

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