024:召喚兎ディオスダード
「はっ! いけないわ~。すっかり召喚獣のことを忘れていたわ!」
妹ウサギはイチゴにもふられながら本来の目的を思い出した。
そして目にも止まらぬ速さでイチゴから離れたのだ。
「ぁ……ウサギさん……」
妹ウサギに避けられたイチゴは悲しげな声を出した。まだもふり足りないようだ。
「そうだった! 肝心の召喚獣じゃなくて
あれほど楽しみにしていたキンタロウですら忘れるほどだ。その原因はノリのスキルの判明でテンションが上がってしまった他、獣ではなくウサギだということのショックからだろう。
しかしノリの最大値スキルによって出されたサイコロの目は6だ。つまり今回のサイコロバトルの報酬の中で一番強い召喚兎がもらえるということになる。
ぴょーんっと元気よく飛び跳ねた妹ウサギが召喚獣の召喚方法を説明を開始した。
「召喚獣の召喚の仕方はかんたーんですわ~。あなたたちの誰でもいいから手を前にかざし『ディオスダード』と唱えるのですよ~。そうするとサイコロのように突如目の前に出現しますわ~」
「呪文とか魔法みたいな名前だな」
召喚するための唱える言葉を聞いたキンタロウの感想である。
しかしその名前はキンタロウが思ったものとは別のものだった。
「ディオスダードは召喚獣の名前ですわ~」と大きなお尻を振りながら妹ウサギは答える。
「名前だったのか。なんかカッコイイ名前だな!」
キンタロウはワクワクで胸がいっぱいだ。今すぐにでも唱えたくて右手がうずうずしている。
そんなキンタロウは右手をかざし名前を唱えようとした。
しかし誰よりも早くイチゴが『ディオスダードォ』と唱えた。
するとイチゴの右手の平からもくもくと真っ白の煙を上げながら召喚獣が召喚された。
召喚されたのはムキムキのカンガルーだ。
「ってウサギでもねぇーじゃんか! カンガルーじゃねぇーかーよ!」とキンタロウは大声でツッコんだ。ここ『第2層11マス』にキンタロウの声が響き渡る。
「どっからどう見てもカンガルーだよね! 二足歩行だし! マッチョだし! マッチョカンガルー! やべーよ。ノリと被ってやがるじゃん。マッチョ被りとかなかなかねぇーぞ!」
キンタロウは召喚されたカンガルーの周りをくるくると歩きながらベラベラ喋っている。
そんなキンタロウを
「うぐぉえぁ!」
吹き飛ばされたキンタロウはニンジンのソファーで逆さまになって何が起きたかわからない状態だ。
「カンガルーとは失礼ゾ。吾輩はウサギゾ」
ディオスダードはサイドチェストのポーズをとりながら蹴り飛ばしたキンタロウに向けて言った。
筋肉に反応したのだろうか、ディオスダードの近くでノリもサイドチェストしている。
ディオスダードの筋肉はノリよりもある。そして身長もノリと同じくらい。いや、ノリよりも少しだけ高い。
筋肉人間か筋肉兎かの違いのみでキンタロウが言った通り完全にキャラ被りをしている。
そんな中イチゴがヨダレを垂らしながら「腕にぶら下がってもいいですかぁ?」とディオスダードにお願いした。
「いいですゾ」
「わ~い」
イチゴがぶら下がれるようにマッチョポーズを変えるディオスダード。
その後ろで妹ウサギも羨ましそうに見ていることに気が付いたディオスダードはさらにマッチョポーズを変える。
ディオスダードはイチゴに右腕を差し出した。そして左腕を妹ウサギに差し出した。そのままイチゴと妹ウサギは差し出された腕にぶら下がった。
ディオスダードはイチゴと妹ウサギをぶら下げながらゆっくりと回っている。これで筋肉ウサギのメリーゴーランドの完成だ。
くるくると回っているところに「ところでディオスダードさんはどんな能力があるんですか?」とモリゾウが質問してきた。
当然の質問だろう。もらえる召喚獣、否、召喚兎の中で一番強いウサギだ。ただ筋肉があるだけとは思えない。何か他に特別な力があるに違いないとモリゾウは思ったのだ。
味方の能力はあらかじめ知っておいた方が戦略の幅が広がる。モリゾウは最善を尽くすためにディオスダードに能力を聞いたのだが……
「……」
ディオスダードは何も答えない。
何も答えないディオスダードに再度質問し直す。
「今後の戦力になることは間違いありません。なのでどんな能力なのか知っておきたいのですが……」
ディオスダードはイチゴと妹ウサギをゆっくりと腕から降ろした。
「見ての通りゾ」
「へ?」
ディオスダードはムキムキの筋肉をモリゾウに見せ付けている。
「吾輩はウサギ界最強のウサギゾ。筋肉以外に能力は必要ないゾ」
「そ、そうですか……」
ディオスダードがウサギ界最強だということは判明した。その代わり能力は無く筋肉で戦うパワータイプだということも判明した。
問題は、ウサギ界最強のディオスダードは
「ディオスダード強いぃ」
イチゴはディオスダードの右腕の筋肉に再びぶら下がろうと手を伸ばしぴょんぴょんと跳ねている。
ディオスダードは紳士的に右腕を差し出しイチゴをぶら下げた。
「わーわー。このままずっと一緒に行動するのぉ?」
大喜びではしゃぐイチゴがディオスダードに質問した。
「吾輩は召喚兎。召喚者の体力をエネルギーに召喚されるのですゾ。なので我輩の召喚中は召喚者の体力が削られていきますゾ」
「召喚者ってこの場合イチゴちゃんのことでしょうか?」
「いいえ。4人全員が召喚できるようにエネルギー源は全員ですぞ。体力の多い人から順番にエネルギーをもらっていく仕組みになっているのですぞ」
モリゾウの問いに召喚兎のディオスダードが答えた。
ボドゲ部の4人なら誰でもディオスダードを召喚できる。ただし召喚している間はボドゲ部4人の体力をエネルギー源として活動することになる。
体力の吸収は体力の多い人順からになる。全員の体力が平均になるように吸収されていくのだ。
ディオスダードを車、4人全員の体力をガソリンだとしよう。ガソリンが無くなれば車は動かない。4人全員の体力が尽きた時、ディオスダードも活動不能になるのだ。
「なので長時間の召喚はオススメできませんゾ」
「なるほどですね。ありがとうございます」
モリゾウは質問に答えてくれたディオスダードに感謝を告げた。そして手に顎を乗せ思考を巡らせている。
タイミングが重要となるディオスダードの使い方を今のうちに考えているのだ。
「それでどうやってこのカンガ、じゃなくてウサギを戻すんだ?」
ニンジンのソファーから起き上がったキンタロウが腰を抑えながら妹ウサギに問いかけた。
しかし答えたのは本人のディオスダードだ。
「簡単ゾ。吾輩に向かって手をかざし『
「な、なんか犬みたいだな……」
ディオスダードの戻し方を聞いたキンタロウは、後ろ蹴りを恐れ、小声で軽くツッコんだ。
「んじゃ体力も心配だし、必要になったらまた呼ぶわ」
「いつでも吾輩を召喚してくだされ!」
戻されるのがわかりディオスダードはイチゴを右腕から降ろした。
「ばいばいディオスダードぉ」
手を振るイチゴ。もっと一緒にいたかったのだろうか。寂しげな表情だ。
「えーっと『
ムキムキの召喚兎ディオスダードに向かって手をかざしたキンタロウ。そして『
その真っ白の煙が消えるとディオスダードの姿も消えていった。
ボドゲ部の4人は『神様が作った
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